1. 企業動向

737MAX運航停止で対応に追われるFAAとボーイング

概要

  • 墜落事故に伴う737MAXの運航停止から9か月が経過したが、再開のめどはたっておらず、影響が長期化している。
  • その間、FAAは信頼を低下させ、各国当局から「離反」の動きが出始めた。
  • ボーイングは莫大な損失補償金を計上、在庫と債務も増大し、ミューレンバーグCEOは引責辞任した。

解説

墜落事故を契機に運行停止となった
737MAX、再開は2020年1月以降

  • ボーイングの中小型機737MAXは、2018年10月にライオンエア、2019年3月にエチオピア航空で墜落墜落を起こしたことで、米連邦航空局(FAA)から運航停止を命じられた。
  • 昨年、ミューレンバーグCEOは運航停止について「2019年中の運航再開を期待している」とたびたび発言していたが、FAAは首を縦に振らなかった。

批判され信頼が低下したFAA

  • 2件の事故を受け、航空業界で強い権威を持っていたFAAへの信頼が揺らぎ始めた。
  • 米国の国策企業とも言えるボーイングと蜜月だったFAAは、1件目の事故の時点で737MAXの運航を停止せず、2件目の事故を防げなかったことで非難の的となった。
  • 2019年12月の米議会下院運輸インフラ委員会公聴会で、FAAが1件目の事故が起きた後に737MAXのリスクを認識していたことが明らかとなってから、批判は再燃している。内部文書によれば、FAAは737MAXが今後30-45年間で、最大15件の墜落事故が起き、2900人が死亡する可能性があることを2018年12月時点で認識していたと言われる。
  • また、以前から指摘されていたが、「安全性評価がボーイング任せ」であることが改めて問題となった。

737MAXの安全性検査と承認が
ボーイングからFAAへ

  • ボーイング任せとの批判を受け、2019年11月にFAAは、737MAXについて航空会社への引き渡し前に自ら機体の検査・承認を行う意向を示した。
  • ボーイングはこれまで、引き渡し前の737MAX型機の安全性検査と承認を自ら行っていたが、FAAがその権限を取り上げた格好だ。

パイロットに模擬訓練飛行
義務化の可能性も

  • さらに、FAAは模擬飛行訓練の義務付けを検討し始めた。737 MAXは事故が起きるまで、コンピューターによる訓練をするだけで操縦可能で、パイロットの訓練費が抑えられることが売りの一つだった。
  • しかしボーイングは737MAXの全ての操縦士に対し、シミュレーターを使った模擬飛行訓練を要請しており、FAAはこれの義務化を検討し始めた。仮に模擬飛行訓練が義務付けられれば、運行再開に更なる時間を要することになる。

欧州とカナダは
737MAXの独自検証へ

  • ボーイングは、今回の事故を受け、737MAXのソフトウェア設計見直しを行っている。運航再開のためには当局が修正を承認する必要があるが、世界では独自の検証を行う国や地域が出てきている。欧州航空安全機関(EASA)やカナダは、737MAXの設計見直しについて、独自で検証する意向を示した。
  • こうした動きは、FAAへの信頼が揺らいでいることの表れだ。

2020年1月から生産停止、
増加する737MAXの在庫

  • 運行停止を受け、ボーイングは2019年3月から航空会社への納入を停止している。
  • 4月から減産に踏み切ったものの、従業員用駐車場に駐機するほどに在庫は増加し、2019年12月時点では400機となった。
  • 在庫の保管コストも考慮したボーイングは、2020年1月から減産に踏み切った。
ボーイング・レントン工場の駐車場に駐機される737MAX/出所:Aerials of 737 MAX planes parked at Boeing Field, Renton factory

ボーイングの負債額は
前年から倍増し247億ドルに

  • ボーイングの負債はこの数年間、おおよそ100億ドルで安定していたが、事故を契機に大きく増加させている。
  • 航空会社に支払う損失補償額に加え、事故に起因する受注・売上の減少が響いていると見られる。2019年第2四半期の決算では、航空会社への損失補償金として50億ドル(約5475億円)の特別損失を計上した。
  • 資金が必要なボーイングは、2019年第3四半期に負債を前年同期比で2倍以上となる247億ドルへ増加させている。
ボーイング負債額の推移/出所:ボーイング財務諸表を元に著者作成

デニス・ミューレンバーグ
CEOが退任

  • 事故後の対応が行き詰まりを見せる中、2019年12月にデニス・ミューレンバーグCEOの退任が発表された。2件の墜落事故やその後の対応を受けた引責辞任だった。
  • 2020年1月から新CEOになる現・取締役会長であるデビッド・L・カルホーン氏は、会計士の資格を持ち、GEのエンジン部門トップを務めた後、ボーイングの取締役を10年務めた経歴を持つ。新CEOとしての最優先経営課題として737MAX問題の解決を挙げている。

737MAXの運航再開時期は
「未定」

  • かように苦境に立つボーイングだが、737MAXの運航再開時期は「未定」となっている。ボーイングは2020年1月から運航を再開できる見通しを発表していたが、FAAが2019年12月にそれを否定した。
  • 事故で批判の的となったFAAは慎重になっており、パイロットの訓練を含めて再開までの準備には時間がかかるものと考えられる。

開発遅れの777Xも試金石に

  • 中小型機の737MAXでつまずいているボーイングにとって、次期大型機である777Xを成功させられるかが重要となる。
  • しかし、GEの新型エンジン「GE9X」の開発遅れに伴い、2020年内の初号機納入が危ぶまれている。
  • さらに777Xの開発遅れに影を落とすのが、独自評価だ。737MAXでFAAが信頼を低下させたことを契機に、欧州とUAEの規制当局は777Xについても、独自の認証審査を実施するとの報道が流れ始めている。エアバス本拠地のEASAは、FAAとの「並行検証」を実施する意向で、777Xのローンチカスタマーのエミレーツを抱えるUAEも、独自の認証プロセスを踏むとの報道が出ている。こうした動きも、777Xの納入遅れにつながる可能性がある。
  • 1機種1機種が経営に与えるインパクトが大きい航空機ビジネスの特性に鑑みれば、737MAX問題の着地に加え、777Xを無事成功させられるかがボーイングにとって試金石となりそうだ。

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