気になる経済ニュースの考察

  1. 通商

日本から韓国へのビール輸出が20年4か月ぶりにゼロを記録するも、影響は限定的

概要

  • 11月28日、財務省は2019年10月の品目別貿易統計を発表した。それによれば、韓国向けビールの輸出量が20年4か月ぶりにゼロを記録した。
  • 韓国は日本にとって最大のビール輸出国ではあるが、これはそもそもビールが輸送費や鮮度の問題から、あまり遠い国への輸出に向かないことに起因している。
  • 韓国で8年間シェア首位を守ってきたアサヒも、欧州や豪州で大規模なM&Aを繰り広げており、韓国での売上減少の影響は限定的だと思われる。

解説

韓国向けビールの輸出量が
20年ぶりにゼロを記録

  • 11月28日、財務省は2019年10月の品目別貿易統計を発表した。それによると、韓国向けビールの輸出量が20年4か月ぶりにゼロになった。
  • 1999年6月以来、順調に増えていた日本から韓国へのビール輸出は、反日感情に基づく不買運動によって、あっけなく途絶えてしまった。

韓国は、日本にとって
最大のビール輸出国

  • 日本から外国へのビール輸出は、過去10年間で約5倍に増加しており、2018年には約1.2億リットルとなった。
  • 順調な成長を遂げる輸出だが、実に7割近くを韓国向けが占めている。輸出国別のシェアでは、韓国が68.4%を占め、シェア10.9%で2位の台湾と大差をつけている。そのため、日本のビール輸出にとって、韓国が最も重要な国の立ち位置にいると言える。

ビールの性質上、
輸出そのものの影響が限定的

  • では、韓国へのビール輸出の影響が大きいかと言えば、そうとはいえない。何故なら、日本メーカーにとって、ビールの輸出そのものがそもそもそれほど重要ではないからだ。
  • 一般論として、飲料は重量が重いため、トラックなどに積載できる量が小さく、輸送費が割高になる。そのため、ビールの生産は消費地の近くで行い、移動距離を最小化することが原則だ。ワインやウィスキー、日本酒など、販売価格が高い飲料であれば売上で輸送費を吸収しやすいため輸出もしやすくなるが、多くのビールはそれを吸収するだけの価格帯で販売されていないため、輸出に不向きだと言える。また、ビールは鮮度が重視されるため、この面からも輸出には向いていない。
  • 日本からのビール輸出の大半が韓国向けである本質的な理由がここにある。海外に輸出する場合、輸送費や鮮度の問題から、輸出する相手国は、地理的に近くないと難しく、距離が一定以上離れれば、輸出ではペイしなくなり、ライセンス供与などに基づく現地生産の方が合理的な選択となる。例えば、日本で販売されているハイネケンは、キリンが国内生産を行っている。逆に、アサヒにとってのバルチカのように、日本のビールメーカーが消費国企業にライセンスを与えて、生産や販売を委託するケースもある。

8年間「輸入ビールシェア首位」の
アサヒにとっても影響は限定的

  • 日本では、アサヒ、キリン、サッポロなどのメーカーが韓国向けにビールを輸出しており、その中でアサヒが最有力だ。韓国の輸入ビール市場において、中国の青島ビールや、オランダのハイネケンなどの競合を抑え、8年連続でシェア首位を守ってきた。
  • そんなアサヒも、今年に入り、日本製品不買運動によって売上が急減した。先日発表された2019年12月期の連結純利益予想では、海外事業のうち韓国を含む部門の事業利益予想を10億円下方修正し、5億円に下げている。
  • ただし、アサヒにとって韓国向けのビール輸出が減少することの影響は限定的だ。何故なら、現在アサヒの主戦場は、日本市場に欧州市場、豪州市場を加えた「3極」となっており、そこでの事業規模は韓国向け輸出規模より遥かに大きいためだ。

アサヒは日欧豪の「3極体制」で
グローバル事業を展開中

  • アサヒは近年、M&Aを通じた積極的な海外展開を進めている。ベルギーのアンハイザー・ブッシュ・インベブ(ABI)から、2016年に西欧のビール事業(約3000億円)、20117年に中・東欧事業(約9000億円)を獲得し、一気に欧州で事業を拡大した。さらに、2019年7月にはABIから、オーストラリアのビール最大手カールトン&ユナイテッドブリュワリーズを約1兆2000億円で買収することに合意したと発表。
  • 有利子負債が大きく膨らむ代償は払いながらも、一連のMBAを通じて、アサヒは一気にグローバル企業化した。売上⾼の海外⽐率は3割、利益ベースでは4割になり、半数以上の従業員が外国人となった。
  • アサヒは韓国での売上金額を公表していないが、こうした欧州やオーストラリアでの事業規模に鑑みれば、韓国向け輸出減少の影響は限定的だと思われる。アサヒは今後さらに「第4極」の確立も狙っており、それが実現した場合、韓国向け輸出減少の影響は、一層小さくなるだろう。

<関連記事>
韓国からの観光客は実際どれくらい減っているのか

通商の最近記事

  1. 世界が変わるデジタル課税

  2. 日本から韓国へのビール輸出が20年4か月ぶりにゼロを記録するも、影響は限定的

  3. 日米デジタル貿易協定、世界で先進的なアルゴリズム開示禁止-WTOなどの参考に

  4. 日米貿易協定、自動車関税撤廃が焦点に、試されるルールベース

  5. 日米貿易協定、24日から審議入り

コメント

  • コメント (0)

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

PAGE TOP