1. 株式市場

ドイツ経済、ZEW景況感指数が改善するも、先行きは楽観できず

概要

  • 11月12日、ドイツの欧州経済研究センター(ZEW)が発表したZEW景況感指数は3か月前と比べて大きく改善された。
  • 米中貿易摩擦や英国の「合意なき離脱」が良い方向に向かったことが要因と考えられるが、事態が好転する保証はなく、先行きは楽観できない。

解説

半年ぶりに回復した
ZEW景況感指数

  • 11月12日、ドイツの欧州経済研究センター(ZEW)はドイツの景気見通しを示すZEW景況感指数を発表した。8月13日に-44.5という数値を記録してから3か月が経過し、指数は-2.1まで戻した。アナリストの予想は-13と見られていた中、それを大きく上回る改善となった。
2015年1月~2019年11月までのZEW景況感指数/出所:ZEW
  • ZEWのバンバッハ所長は、 ZEW景況感指数が改善した理由について、 「国際的な経済政策環境は近い将来に改善するとの期待が高まっている」とコメントしている。

米中貿易摩擦が緩和するとの
観測が出始めている

  • バンバッハ所長が言うところの「国際的な経済政策環境の改善するとの期待」が起こる理由の一つは、米中貿易摩擦が緩和するとの考えだと思われる。
  • 米国では、すでに米中貿易摩擦の副作用が生じ始めており、来年選挙を控えるトランプ大統領が、そろそろ手を緩めざるを得ないのではないかとの推測が背景にある。
  • 現状、米国の経済で最もダメージを受けているのは、大豆産業だ。中国は世界の輸入総量の6割を占める、世界最大の大豆輸入国だ。
2018/19における世界の大豆の輸入量の構成比/出所:USDAから著者作成
  • そんな中国が今年8月、国有企業に対し、米国からの大豆輸入を停止するよう命じた。米国は、大きな輸出先を失った状態であり、トランプ大統領の支持基盤でもある大豆農家は、不安を感じていることだろう。
  • その他にも、中国への関税引き上げ措置によって、鉄鋼・アルミは費用がかさみ、関連産業は打撃を被っている。
  • さらに、米国の消費の一定割合を占めるクリスマス商戦でも、対中関税が消費者の負担増となり、政権への不満につながる可能性もある。
  • また、株価も気になるところだ。ダウ平均は依然過去最高を更新し続けてはいるものの、貿易摩擦の動向に反応して上下を繰り返している。トランプ大統領は就任当初から株価を重視しており、株価を下げるような大胆な行動はとりづらくなってきていると思われる。
  • こうした中、10月には米中が閣僚級協議で貿易について部分的な合意に達するなど、緊張緩和の動きが見られ始めている。

米国は対EUの自動車関税
も延期する可能性

  • よりドイツにとって直接的な動きとして、米国の対EU自動車関税も延期される可能性が生まれている。
  • 米国はEUから輸入する自動車に対し報復関税を発動することを検討しており、11月14日が判断の期限だが、それが延期される可能性が高いという報道がされているのだ。
  • 複数のEU当局者が、再度半年間、トランプ大統領が報復関税発動の判断期限を延期する可能性が高いことを明かしている。

英国の合意なき離脱も
延期された

  • さらに、英国による合意なき離脱が当面回避されたことも、プラスに影響したと考えられている。
  • もともとジョンソン首相は、選挙公約で、10月31日までにEUとの合意の有無にかかわらず、EUを離脱すると宣言して当選した。したがって、本来英国は10月31日までにEUを離脱するはずだった。
  • しかし、今年9月に議会がEU離脱延期法が成立させ、ジョンソン首相に、強制的に離脱期限の延長をEUに申請させた。
  • 10月28日、EUは各国大使による協議を行い、イギリスのEU離脱期限を、最長で2020年1月末まで延長することで合意した。
  • わずか3カ月ではあるが、離脱期限が延長され、最悪の形での離脱は当面見送られたことが、投資家の心理にプラスに作用したと考えられる。

しかし先行きは楽観できない

  • 以上が想定されるZEWの改善要因だが、先行きは楽観できない。
  • 何故なら、米中貿易摩擦も、ブレグジットも、事態が好転していく保証はどこにもないからだ。
  • 米中貿易摩擦については、10月に閣僚級協議で部分合意に達したものの、首脳同士が署名する日程は決まっておらず、内容もまだ交渉している最中だ。しかも、仮に合意したとしても、幅広い交渉事項の中の「部分的な合意」に過ぎない。来年の大統領選を控えトランプ大統領が態度を軟化させる可能性はあるが、そもそも米中貿易摩擦は些末な貿易摩擦ではなく、米中の覇権を巡る争いだ。そのため、互いが譲れないものが数多く出てきて、長期化する可能性が高い。
  • そうすると、必然的に米中、ひいては世界の経済成長は阻害される。自動車などの有力産業を抱え、輸出がGDPの4割を輸出が占めるドイツにとって、これは大きなマイナスとなる。2018年におけるドイツの輸出相手国の1位と3位が米国と中国だ。
  • さらに、ブレグジットも延命されただけで、合意なき離脱の可能性は依然として残っている。ドイツにとって英国は、米国や中国に劣らない大きな輸出市場だ。
ドイツの国別輸出金額/出所:ドイツ連邦統計局から著者作成
  • 合意なき離脱が実現した場合、関税や非関税障壁(税関手続きなど)、それに伴う調達コストの増加などにより、中長期的に輸出が57%も減少しうるとの予測がドイツ経済研究所から出されている。

銀行危機もくすぶる

  • これらのほかに、銀行危機もくすぶっている。以前取り上げたように、ドイツ銀行の経営状況は悪く、コメルツ銀行も今年、人員削減、支店縮小を決断した。
  • 個々の銀行の経営課題に違いはあるが、共通している課題はマイナス金利だ。欧州中央銀行(ECB)のマイナス金利政策は長期化しており、出口が見えない。
  • そんな中、ドイツに限らず、英HSBC、仏BNPパリバ、ソシエテジェネラルなど、欧州各国でも銀行の収益が悪化し、人員整理や支店縮小を進めている。
  • こうしたいくつものリスクを抱えているため、ZEW景況感指数が上向いても、ドイツ経済の先行きは楽観できない。

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