1. 産業政策

米国がパリ協定を離脱、一方でRE100加盟企業は世界最多

概要

  • 11月4日、米国は国連にパリ協定からの離脱を正式に通知した。
  • 世界第2位の温室効果ガス排出国の離脱は、単に温室効果ガス削減などの目標達成を困難にするだけでなく、他国が協定を遵守する動機を下げる影響もある。
  • 一方で、企業単位や州単位では再生エネルギーを導入する動きが広がりつつあり、米国のエネルギーミックスの将来像は見通しづらくなっている。

解説

米国がパリ協定からの
離脱を国連に通告

  • 11月4日、米国は温暖化対策の国際的な取り決めを決めた2015年の「パリ協定」からの離脱を国連に通告した。実際の離脱は2020年11月4日となる。
  • トランプ大統領は、2017年6月に大統領選の看板公約として離脱方針を既に表明しており、今回の通告で公約を実現した格好となった。
  • アメリカは世界で唯一、同協定に参加していない国となった。

トランプ大統領にとって
パリ協定は
「米国の国益」に反するもの

  • トランプ大統領は、パリ協定からの離脱意向を表明した時、こう発言した。

「私はパリではなくピッツバーグの市民を代表するために選ばれた。アメリカの国益にならない協定からは離脱するか再交渉を行うと約束する」

  • 「米国の国益」を第一に考える政治スタンスを一貫して崩すつもりはないように見える。
  • では、ここにおける「米国の利益」とは何か。それは、トランプ大統領のエネルギー政策を見れば見えてくる。
  • トランプ大統領のエネルギー政策は、米国に賦存する、石炭や石油、シェールガスといった化石燃料を米国外に輸出することで、「エネルギーの自立」から「エネルギーの支配」へと到達する構想だ。同構想では再生エネルギーの存在を否定していないが、米国の強みを生かせるシェールガスなどの利用を念頭に置いているのは明らかだ。 トランプ大統領は、以前から気候変動を「中国の作り話」と形容しており、尊重していない。

米国内でも環境規制のトレンド
に逆行するトランプ政権

  • トランプ政権は、環境規制が強まる世界の潮流に逆行するかのような行動を米国内でも取っている。その一例が燃費規制の緩和だ。
  • オバマ大統領時代、2025年までに1ガロン当たりの走行距離を27%伸ばし、50mpgとするCAFÉ(燃費)規制の目標が定められた。ところが、2018年にトランプ政権は、これを白紙撤回すると宣言した。
オバマ政権が定めたCAFE目標値(縦軸はMPG)/出所:VOX
  • さらに同政権は、州が独自に制定できる環境規制も無くそうとしている。例えば、カリフォルニア州は、ZEV規制と言われる先進的な規制を取り入れている。同州内で一定台数以上の自動車を販売するメーカーは、販売台数の一定比率を電動車両にしなければならないという規制である。それによって、米国でも一定数のEVやPHEVが普及するようになるという効果があった。しかし、トランプ大統領は、このような、州独自の基準を廃止しようとしている。

ボトムアップで盛り上がる
WE ARE STILL IN とRE100

  • 米国がパリ協定を脱退する一方、民間企業のレベルでは、いわばボトムアップの方向で環境規制強化、再生エネルギー活用の動きが広がっているのが興味深い。
  • 温暖化対策強化を訴える組織「WE ARE STILL IN」に参加する企業、州、大学は3811となり、2017年の設立時よりも3倍の規模に増加した。
  • また、「卒FIT」の記事でも取り上げたRE100にも、米国からは62社が参加しており、国別で最大数だ。RE100は、気候変動対策に取り組む国際NGO「クライメイト・グループ」が、同じ環境分野の国際NGOである「CDP」とのパートナーシップの下で運営。自然エネルギーだけで事業活動を行うことを宣言した企業が207社加盟している。(2019年11月10日現在)
RE100参加企業/出所:EKOenergy

グローバル企業に働く
ESGと「共感」という力学

  • 企業が地球温暖化対策に取り組むのは、そうしなければ様々なステークホルダーにそっぽを向かれてしまう危険性があるからだ。
  • 投資家という切り口では、ESGが急速に規模を拡大してきている。ESG投資とは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(コーポレートガバナンス)それぞれにおいてきちんと取り組んだ企業が長期的、持続的に成長できるという考え方から、そうした企業に対して行われる投資のことだ。世界中の機関投資家、大手の投資会社や運用会社がこぞって、ESG投資に乗り出し、今や世界全体で30兆円以上が運用されている。こうした動きが広がると、環境問題への取り組みが不十分とみなされる企業は、投資対象から外されるリスクがある。そのため、企業は積極的に取り組まざるを得ないのだ。
  • こうした圧力は、投資家だけではなく、消費者サイドからも発生している。消費者の環境意識の高まりから、環境問題への取り組みが不十分な企業の商品やサービスは、「共感」されづらく、選ばれにくくなる可能性が高まっている。こうした消費は「エシカル消費」とも呼ばれ、一つのトレンドになってきている。

エネルギーの将来像が
見通しにくい米国

  • 欧州では各国政策に小異はありながらも、CO2の排出量削減と、そのための再生エネルギー普及、脱炭素という方向性は大同で一致している。2021年に英国、2025年に仏が「脱石炭」、つまり石炭火力発電を辞める方針だ。ドイツは少し遅れて2038年に「脱石炭」をすることを検討し始めている(ドイツは脱原発も進めているため、一気に石炭火力発電を減らしづらい状況にある)。この動きは官民一体であり、トレンドは進むと思われる。
  • 日本は、ヨーロッパと違って、近隣諸国から電力を輸入することができないため、単独で脱炭素を進めなければいけない苦しさがある。しかも、3.11以降は、原発にも頼ることができなくなった。肝心の再生エネルギー産業は、外国勢に完全に出遅れてしまった現実がある。太陽光パネルの生産は中国勢が上位を独占し、風車の生産でも米国勢、欧州勢に追いつけない。しかし、政府はパリ協定にはコミットしているし、株主からの評価を気にするグローバル企業はRE100に今後もどんどん加入していくだろう。日本が世界の潮流に合わせて再生エネルギーの導入を進めていくのは想像に難くない。
  • それに比べて、先が読みづらいのが米国だ。シェール革命で一気に「エネルギー強国」を狙える立ち位置に来たのが数年前。そして、トランプ政権はパリ協定を離脱した。それらを踏まえれば、化石燃料を主体としたエネルギー政策が続きそうだ。
    一方で、「脱炭素」や再生エネルギーの普及という世界の潮流に合わせ、米国からも多数のRE100企業が誕生している。さらに、米国には、カリフォルニア州のZEV規制に代表されるような、州単位での環境規制/政策が設定できる。2015年にハワイ州は、2045年までに再生可能エネルギーの割合を100%にする法律を可決している。こうしたボトムアップの動きから、案外米国でも脱炭素/再生エネルギーの普及、そしてCO2排出削減が進んでいく可能性がある。

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