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  1. 産業政策

東京モーターショー、OPEN FUTUREをコンセプトに「クルマの展示会」からの脱却を図る

概要

  • 近年来場者数が減少している東京モーターショー。
  • 今回はOPEN FUTUREを合言葉に、単なるクルマの展示だけでなく、サービスを体験できる場を設け、進化を試みている。
  • さらに、クルマの展示にも、未来を感じさせるものが増えてきている。

解説

来場者数が減少する
東京モーターショー

  • フランクフルト、パリ、ジュネーブ、デトロイトとともに世界の5大モーターショーの1角を占める東京モーターショーだが、その来場者数は減少を続けている。1991年に200万人を記録した来場者数は、その後減少を続け、前回の2017年モーターショーでは77万人となった。
  • もっとも、来場者数が減少しているのは、東京モーターショーだけではない。パリやフランクフルトなど、他のモーターショーでも来場者数が減少し始めており、これは世界的なトレンドとなっている。

消費者が感じる魅力が減少

  • 来場者数が減少している要因は、消費者側、供給者側の双方にある。
  • 消費者については、 「若者のクルマ離れ」と言われるように、クルマに魅力を感じる人が減っている。
  • これについては、1つには経済的な理由が挙げられるだろう。日本では失われた20年の中でデフレ経済が定着し、高額な消費をしたいという欲そのものが減少している。
  • もう一つは、クルマが、新たな価値を提供できず、コモディティ化してしまったことが挙げられる。スマホの登場で、日々デジタルなサービスが新しく登場し消費が多様化している一方で、クルマは旧態依然とした、「単なる乗り物」としての価値提供しかできていない。燃費、環境性能や安全機能などの性能進化は目覚ましいが、消費者からすればそれは既存の機能の改善を積み重ねに過ぎず、新たな刺激や感動を呼ぶようなものにはなれなかった。そのせいで、クルマは、「高額なくせにコモディティ」という珍妙な売り物になってしまったのではないだろうか。

出展するメーカーが減少

  • 来場者数が減少している供給者側の要因は、彼らがモーターショーに頼らない方法で顧客への訴求を始めたためだ。
  • 1つには、SNSの発達で、モーターショーを使わずとも、youtubeでの動画放映や、インフルエンサーを使ったfacebook、twitter、wechatといったSNSでの情報発信によって、届けたいターゲットに効率的・効果的に広告宣伝を行えるようになったことだ。
  • もう一つは、CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)やMWC(Mobile World Congress)といった、電機/通信業界の見本市での訴求が効果的になってきたことが挙げられる。クルマは制御がどんどん電子化され、動力源も電動化されてきている。そうした意味で、巨大な電子機器になりつつあるのだ。さらに、カーナビや音楽などの「インフォテイメント」と言われる分野や、センサー/カメラなどから得た情報をクルマ同士で共有するために、外部と通信する機会も増えてきており、通信業界とのかかわりも日々深まっている。そのため、CESやMWCでの訴求を行うクルマメーカーが増えているのだ。
  • 今回東京モーターショーに出展した海外の自動車メーカー/ブランドは、メルセデス、スマート、ルノー、アルピナの4つだけだった。この兆候は飛ぶ鳥を落とす勢いの中国以外では世界共通だ。9月に行われたフランクフルトショー では、逆に日本のメーカーで出展したのはホンダだけだった。

単なる「クルマの展示会」から、
体験イベントに脱皮しようとしている

  • このように、 消費者からもメーカーからも次第にパッシングされ始めたモーターショー。だが、筆者は単に凋落の一途を辿っているわけではないと感じている。今回の東京モーターショーのコンセプトは、「OPEN FUTURE」。体験型の施設を増やし、異業種も巻き込んで自動車産業の未来を探る作りになっていた。
  • 会場は、これまで使っていた有明のビッグサイトに加えて、青海のMEGA WEBも活用した。そして、その2つの会場を結ぶ1.5kmの道路を「OPEN STREET」と名付け、電動キックボードや、次世代小型モビリティなど、未来のモビリティに乗って、自由自在に行き来できるようにした。
  • 実際には、来場者に対してモビリティの供給が圧倒的に足りず、体験できる人がかなり限られてしまっている印象を受けたが、単なる「クルマの展示会」から、体験型のイベントに脱皮しようとしていると感じた。

クルマの展示も、新たな価値を
感じさせるものが増えてきた

  • 今回の東京モーターショーでは、「移動の足としてのクルマ」というコモディティの概念を打ち破る展示が増えていたのが印象的だった。より直接的に言えば、人の移動にも、物流にも、物販にも使えると言った、多目的な「箱型」のクルマ展示が増えてきたように感じる。
  • 代表例はトヨタ自動車のe-palleteだろう。箱型の自動運転車両で、2020年東京オリンピックでは選手村内を巡回するバスとして選手や大会関係者の移動をサポートするために使われる。キーワードは「箱型」ということだ。それはこれから紹介する他のクルマも同じで、要するに「使い手のニーズに合わせて色々な用途がありうる」ということだ。
トヨタ自動車e-pallette  / 出所:トヨタ自動車HP
  • 同様に、スズキやダイハツも、「箱型」のクルマを披露していた。スズキは「HANARE」で家の「離れ」のようなほどよい大きさの室内空間が移動するクルマを出展。室内空間はまさに家の中のようで、運転以外の楽しさ、ワクワクを提案していた。これ以外にも、同様の意図をもったメーカーが何社もいた。
スズキ自動車 HANARE / 出所:スズキアリーナ湘南おだわら

過渡期を乗り越えれば、
モーターショーがまた面白くなる

  • まだ課題はあるものの、来場者がモビリティを体験できる体験型イベントが増えてきて、クルマの展示も、だんだんと従来のクルマの枠をはみ出すものが増えてきたように感じる。
  • 思えば、この20年間はクルマという製品の機能がひらすら向上した時代だった。
  • 1997年にトヨタが内燃機関とモーターのハイブリッドで動くプリウスを発売し、クルマの電動化の第一歩を踏み出した。その後、ハイブリッドシステムで日本勢に追いつけないと確信した欧州や中国が環境規制を積極的に導入し、ピュアEVを含めた電動化の流れが世界的に一気に進んだ。さらに、水素自動車(FCV)、マツダの火花点火制御圧縮着火(SPCCI)など、それ以外にも動力源の進化はめざましく進んだ。
  • 安全機能も、飛躍的に進歩した。スバルのアイサイトに代表される自動ブレーキだけでなく、今では、前方のクルマとの車間距離を自動で調整しながら追従するアダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)や、白線をはみ出さないレーンキーピングもクルマがしてくれるようになった。
  • 素晴らしい技術の数々が結実しながらも、消費者にとっては、せいぜい燃費がよくなったり、CO2の排出が減ったり、事故が減ったりするといった類のもので、ライフスタイルを変えるほどのものではなかった。そして、皮肉にもクルマの「コモディティ化」が進行した。
  • しかし、これからは、クルマの使われ方が本格的に変わり、人々のライフスタイルも変える時代がやってくる。キーワードは、自動運転と何にでも使える「箱型」車両の普及だ。それらは、プライベート空間としても、オフィスとしても、移動店舗としても使える。組み合わせは自由だ。車内で広告を流してもよいし、音楽を流してもいい。
  • 今はCASEと言われる、通信、自動運転、シェアリング、電動化の技術トレンドが結実する前の過渡期だが、これを乗り越えれば、クルマが既存の枠を超えて、あらゆるサービスとつながる時代が訪れる。
  • その時、モーターショーも、自動車業界という枠を超えて、色々な業界が参加し、色々なサービスを体験するイベントに変化しているだろう。今回のモーターショーは、「箱型車両」と「体験型イベント」の増加で、その兆候を感じさせるものだった。

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