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中国を念頭に外為法改正へ

概要

  • 10月18日、政府は外為法の改正案を閣議決定した。
  • 原子力や航空機、サイバーセキュリティといった安全保障などに関わる業種について、現在は上場企業の10%以上の株式取得する場合に事前届け出が必要とされているが、この要件を1%に引き下げる。
  • 規制厳格化を危惧し外国人株主の資金が流出してしまうリスクが懸念されたが、政府がいくつかの例外措置を講じたことで、そのような事態はいまのところ起きていない。

解説

外為法改正案を閣議決定

  • 政府は10月8日に、外為法改正案を公表し、続く10月18日には閣議決定を行った。
  • 現在開会中の臨時国会で成立させ、2020年度中に施行したい考えだ。

改正案の概要

  • 世界のさまざまな国では、安全保障上の理由から、自国で行われる投資活動に制約を課している。日本の場合、その役割を果たしているのが外為法だ。
  • 現在の外為法では、外国投資家が日本株を持つ場合、10%以上取得するには事前届け出が必要だ。
  • 今回の改正案では、それを1%にまで引き下げる。投資家は、1%の株式を保有するためだけに、事前の届け出が必要になるということだ。
  • さらに、海外投資家が、出資した日本企業について役員選任の提案や、重要な事業の売却など、経営に影響を与える行為をする場合にも事前届け出が必要になる。
  • 事前届出が行われると、原則として 30 日間審査が行われ、その間は株式取得ができない。そして、この届け出を審査し、安全保障上の問題があれば、政府が止めることができる。

米国主導の対中包囲網
という「外圧」

  • そもそもなぜこのタイミングで外為法を改正するのか。
  • 最大の要因は、米国などが強める対中包囲網への対応だと言われる。
  • 米国では2018年8月、中国を念頭に外資規制を大幅に強化する新法が成立。この新法が施行されるのが、2020年2月であるため、日本はそれに合わせて足並みを揃えたと言われる。
  • 米国は欧州諸国にも、自分たちと同様に華為を排除するよう求めてきたが、EUは各国の裁量に委ねる方針を表明。10月に入り、英国とドイツは華為を排除しないことが明らかになった。
  • 米国と欧州諸国の対中政策の溝が鮮明になり包囲網にほころびが生じる中で、米国から日本への圧力が強まった可能性がある。

日本にもアクティビスト封じ
という動機がある

  • また、日本政府にも規制強化の動機があったと思われる。それは、アクティビストの力を弱めることだ。
  • アクティビストとは、日本で「モノ言う株主」と呼ばれる人たちのことだ。
  • 彼らは、たった数%という限られた株式保有比率/議決権比率を持ちながら、他の株主も巻き込むことで企業の経営方針に口を出し、経営判断に影響を及ぼすことが特徴だ。
  • 単独で大きな議決権を持ち、それを基に企業をコントロールしようとする大株主とはその点において異なる。
  • 彼らの目的は、それによって自らの利益を最大化することだ。企業にはリストラやコストカットをさせる一方で、M&Aや研究開発投資といった投資は控えさせ、短期的な利益追求をさせる。そうして配当を増やし、株価を引き上げたところで保有株を売り抜けるというのがセオリーだ。

アクティビストが
日本で活性化し始めていた

  • 最近、アクティビストの影響力が強まっていることが政府の動きを後押ししたものと考えられる。
  • 2019年6月に東芝が、アクティビストの意向を受け取締役12人のうち10人を社外取締役とし、うち4人を外国人とした。
  • 同月、オリンパスも株主総会で米ファンド、バリューアクト・キャピタルから取締役を受け入れた。
  • こうしてアクティビストが経営により深く関わることで企業価値が高まる可能性もあるが、弊害が大きい事例も数多い。
  • 近年凋落したGEは、アクティビストを始めとする株主への配分を優先した結果、設備投資が後回しになり、競争力を落としたと言われる。そして、イメルト以降、CEOはアクティビストから強いプレッシャーを受け、次々に退任することになった。じっくり腰を据えて長期的視座から経営を行ったウェルチや初期のイメルトからは考えられないスピードでCEOが交代している。
  • こうして色々な企業が経営の自由度を奪われる様子を見れば、日本の安全や秩序に関わる企業にアクティビストが及ぼすリスクを推し量ることができよう。
  • 最先端技術を持つ東芝に、4人もアクティビストの息がかかった社会取締役が就任してしまったことは、特に政府の危機感をあおったのではないだろうか。

今のところ株式市場に
動揺は見られない

  • こうした規制強化の動きは、当然ながら海外投資家から歓迎されるものではない。
  • 今や日本で30%程度の株式保有率を持つ海外投資家が、資金を引き揚げるようなことがあれば、日本の株式市場に大きなマイナスの影響が出ることも懸念された。
  • しかし10月18日、政府は、ヘッジファンドを含む資産運用会社は、経営に関わらないことを条件に、原則として事前届け出の対象外とする方針を発表した。さらに、「外国政府などの影響を受ける者」(国有企業等と思われる)も対象外とした。当初は1%以上を取得した場合に義務付けるとした事後報告義務も、負担を軽減することを表明。
  • 詳細は今後、政省令で明確化される予定だが、現段階では海外投資家の資金引き上げは起きていない。

仕組み作りはこれから

  • 今回の外為法改正案は、まだこれから細かい仕組み作りが待っている。
  • 例えば、先に述べた「外国政府などの影響を受ける者」の具体的な対象を定める線引きはこれからと見られる。
  • さらに、基準を10%から1%に引き下げたことで、審査すべき件数が大きく増大すると見られる。現在の届け出数は年は年間約600件だが、改正後は8倍まで増加する見通しだ。自国側の体制拡充に加え、外国政府との国際協力などによって、効率的かつ効果的に審査をこなしていくことが求められる。
  • 日本の株式市場で3割の保有比率を持つ海外投資家に引き続き日本市場で投資を続けて貰うため、いかに負担のない投資環境を提供できるが重要になりそうだ。

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