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  1. 企業動向

JDI再建、嘉実基金が出資取りやめで混迷が続く

概要

  • 9月26日、それまでジャパンディスプレイ(JDI)に4億8500万ドルの出資をすることに同意していた嘉実基金が、出資を取り下げるとの報道があった。
  • 翌日のJDI株主総会では嘉実基金との交渉継続を前提に議案を可決したが、経営再建中のJDIを再び財務リスクの影が覆った。

解説

5年連続の純損失計上で
経営再建中のJDI

  • JDIは、嘉実基金の4億8500万ドルの出資を含む、約800億円の資金調達を取り付ける計画だった。
  • なぜなら、2019年3月期の連結決算は5年連続で純損失を計上し、経営再建の真っただ中にいるからだ。
  • ところが、最大の出資先と目されていた 嘉実基金が9月の株主総会を直前に撤退の意向を示した。
  • 結局、株主総会では800億円の金融支援を受け入れるための新株発行などの議案を可決したが、嘉実基金との「交渉を続ける」との前提を置いたうえでの可決となり、実効性には疑問符が付いている。
  • JDIは筆頭株主のINCJから200億円を借り入れられるため当面資金繰りに行き詰まることはないと発言しているが、先行きは決して楽観できない。
  • この資金繰り難は競争力のなさという構造的な問題から生じており、競争力を高めて成長を遂げる戦略を未だ描けていないためだ。
  • そもそもJDIはなぜこんな状況に陥っているのか、歴史を振り返ってみたい。

設立後数年間は
好調だったJDI

  • 近年の不調で、今となっては当初からINCJ(旧産業革新機構)がJDIを支援したことが一貫して誤りだったかのような声さえ聞こえてくるが、実態は異なる。
  • ジャパンディスプレイの設立は2012年4月で、このとき産業革新機構は2000億円を投資した。
  • しかし、JDIはすぐに経営が不調になったわけではなく、この頃はスマホの市場拡大・高機能化が進み、JDIの事業も好調だった。
  • 2014年3月には、JDIは東証1部上場を果たし、産業革新機構は、保有株の約5割を売却して1674億円を手に入れた。
  • ブルームバーグ・ニュースの試算によれば、この株式売却益と、残った保有株式の価値(2014年3月25日終値ベース)の総額は3230億円だった。
  • つまり、産業革新機構は2000億円の投資をわずか2年で1.6倍以上に増やしたのだ。
  • この時点では産業革新機構によるJDIへの投資は成功事例だった。

中韓の台頭で
急速に勢いを失った

  • しかし、いい時期は長くは続かなかった。中国や韓国のメーカーが国からの補助金も含めた圧倒的な資金力で台頭する中、JDIは競争力を失っていった。
  • 株式公開から1年もたたないうちに2度も業績予想を下方修正し、株価は3分の1に下落した。
  • IPOからほどなくして、いきなりJDIはその勢いを失ったのであった。

「禁断の果実」
だったアップル

  • こうした不調の中で、JDIに手を差しのべたのがアップルだった。
  • 今やJDIの売上の60%はアップル向けであり、今のJDIはアップル抜きには成り立たないほどの大きな存在であることは確かだ。
  • しかし、アップルとの蜜月は、JDIの長期停滞の要因という側面も持っている。
  • IPO後の停滞が続く2015年3月、JDIはスマホ向け液晶パネルを生産するため、石川県に白山工場を建設することを発表した。
  • 2016年5月の稼働を目指し 、総投資額1700億円の大半をアップルからの前受け金で賄い、建設を進めた。
  • ところが、iPhone6の販売不振を受け、アップルは2016年9月発売のiPhone7の生産台数を当初計画から大幅に減らした。
  • さらに、アップルは2017年以降に発売するスマホに、液晶ではなく有機ELを採用することを決めた。
  • こうして、白山工場は完成したが稼働は延期となり、稼働開始後も低生産が続いた。
  • その後も世界的な有機ELのトレンドがますます強まる中で、液晶パネルの生産工場である白山工場はラインを停止するなどの苦境に追い込まれていた。
  • そしてなすすべなく今年9月に、1266名の希望退職という形で、大規模なリストラが行われた。
  • JDIの国内全従業員4635名のうち、約27%に相当する事態だ。
  • 結局JDIは短期的にはアップルの売上によって延命できたが、有機ELではなく液晶パネルに投資したことで、中長期的にはその傷をより深いものにしてしまったと言える。

動かない白山工場の
前受金を返すJDI

  • ちなみに当然のことながら、アップルから貰った前受金は、のちに返済義務がある。
  • 週刊ダイヤモンドの記事によれば、JDIはアップルから「年間2億ドル(約220億円)または売上高の4%のいずれか高い金額を四半期ごとに返済する」「JDIの現預金残高は300億円以上を維持する」という2つの契約条項を課されている。
  • さらに、JDIがこれら2つの条項を守れなければ、アップルは「前受け金の即時全額返済、または白山工場の差し押さえ」を要求できる権利を持つという。
  • アップルは現在、支払い猶予などの措置を講じてくれてはいるものの、JDIは、動かない白山工場を建設した際に受け取った前受金をアップルに返しているのだ。

一筋の光明は
有機ELの生産開始

  • JDIは有機ELに乗り遅れた失地回復ができるのだろうか。
  • 実は、アップルウォッチの2019年新モデルのシリーズ5から、LTPO有機EL供給に、JDIも加わるとの観測がなされている。
  • これまではLGディスプレイが供給してきたが、寡占化が進んでいるディスプレイ業界において、アップルも複数のサプライヤーと取引したい思惑があるのだろう。
  • JDIにとっては、貴重な収益機会であるとともに、今後の取引獲得、あるいは支援者を募集するためのアピール材料になる。
  • アップルへの納品が無事終わった後も、JDIの成長戦略を描く上で必要とされてきた「脱・アップル一本足打法」を一歩進められるかが重要だ。
  • その点において、アップルウォッチ向けの有機EL供給が、JDIにとって、一筋の光明であるとともに、成長への試金石となっている。

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