気になる経済ニュースの考察

  1. 株式市場

香港証券取引所、ロンドン証券取引所の買収を提案

概要

  • 9/11、香港証券取引所は、ロンドン証券取引所(LSE)に316億ポンド(約4兆円)で買収を提案したことを発表した。
  • LSEは金融情報会社リフィニティブの買収を発表したばかりだが、香港証券取引所はリフィニティブ買収を進めないことが、LSE買収の条件になるとしている。

解説

証券取引所の
ビジネスモデル

  • 証券取引所は、資金を必要とする上場会社と、資金の供給によって利益を稼ぎたい投資家をつなぐことで、成り立っている。
  • 収益源は、大別して以下の3つだ。
  • 1つ目は、企業が上場するときに企業から貰う上場料だ。
  • 企業は上場することで資金調達が容易になるため、それに対する対価を支払う。
  • また、上場の過程で証券取引所は企業を支援したり、審査したりするため、その対価も貰う。
  • 2つ目は、株式の売買で発生する手数料だ。
  • 投資家から依頼を受けた証券会社が証券取引所に株式売買を依頼してくる際に、取引参加料を貰っている。
  • また、いざ代金が決済されれば、証券会社から清算手数料も貰う。
  • 3つ目は、取引に関する情報の販売だ。
  • ニュースサイトなど、株式市場に関する情報を必要とする企業に、取引などの情報を販売して対価を貰う。

デジタル化がもたらした
証券取引所の合従連衡

  • そんな証券取引所に合従連衡の波が押し寄せたのは2000年代だった。
  • 取引所間の競争の激化が進む中、2007年4月に、世界最大の米ニューヨーク証券取引所(NYSE)を運営するNYSEグループと欧州の複数の証券取引所を運営するユーロネクストが合併。
  • 同年10月には、ロンドン証券取引所(LSE)とミラノ証券取引所も経営統合した。
  • こうした合従連衡の背景にあったのは、デジタル化の進展により投資家の判断に必要な情報の提供や、取引そのものの高速化が進んだことだ。
  • 取引所のビジネスは単純かつ均質化しており、従来は差別化ポイントが殆どなかった。
  • しかし、デジタル化の進展は、取引所間で、売買注文の処理スピードや情報提供力の格差を生み出すことにつながり、それが差別化ポイントになっていった。
  • 証券取引所は、いかに早く、安く売買注文を処理し、取引データを供給できるかが重要になり、そのために証券取引所同士の合従連衡が避けられなくなった。

ロンドン証券取引所は
リフィニティブ買収を画策

  • こうした証券取引所の合従連衡は2000年代に始まった動きだが、現在もその延長線上で競争を続けている。
  • その一例が、今年8月に合意が発表されたロンドン証券取引所による金融情報会社リフィニティブの買収だ。
  • リフィニティブは元々トムソン・ロイターの完全子会社だったが、昨年 米投資会社のブラックストーンを中心とするコンソーシアムが買収。
  • その結果、現在のリフィニティの株主構成は、同コンソーシアムが55%、トムソンロイターが45%となった。
  • リフィニティの強みは、金融に関する情報の提供だ。
  • 同社は、金融情報端末「アイコン」などを通じて、約190カ国の4万を超す企業や機関に市場や企業財務、M&Aなどの情報サービスを提供している。
  • 日本企業にも同じみの金融情報サービス「ブルームバーグ」と似たサービスだ。
  • ロンドン証券取引所は、270億ドルを支払いそのリフィニティを買収することに合意したと発表した。
  • レバレッジドバイアウトを使い、リフィニティを買収する代わりに既存株主のコンソーシアムやトムソンロイターに対して新株を発行する。
  • 新株によって、既存株主はロンドン証券取引所の株式の37%を握ることになる。
  • 議決権は30%弱に制限したとは言え、大規模な投資であり、情報提供能力の強化をどれだけ重視しているかの表れだ。
  • ロンドン証券取引所は14年に米運用サービス大手フランク・ラッセルを買収し、17年に米シティグループから債券の分析・指数事業を取得した。
  • いずれも情報提供サービスの強化を狙った買収で、リフィニティを加えさらに競争力を磨こうとしている。

香港証券取引所が
ロンドン証券取引所に合併を提案

  • そんな中、9/11に香港証券取引所が、ロンドン証券取引所に合併を提案したと発表した。
  • 総額296億ポンド(約3兆9400億円)で同社の全株式を取得するという内容だ。
  • 香港証券取引所は2012年にロンドン金属取引所(LME)を傘下に収めており、欧州の拠点を一層強化する狙いがあると思われる。
  • さらに、足元では香港のデモで資金調達額が大きく減少しており、不安なイメージを払拭する狙いもありそうだ。
  • 一方、ロンドン証券取引所も上海市場との相互取引を開始しており、アジア事業の強化を目指している。
  • 相互補完になり得る組み合わせだが、香港証券取引所は、リフィニティの買収取りやめを合併の条件とした。
  • これには2つの思惑があると思われる。
  • 1つは、買収は往々にして高値掴みになり、のちに「減損」などのリスクが生じやすい。
  • これを避けるためにリフィニティ買収を止めさせたいというものだ。
  • もう1つは、リフィニティ買収によってトムソンロイターなど他の企業がロンドン証券取引所の株式を保有し、買収交渉の障害となることを嫌がっていることだ。
  • 但し、データビジネスを強化するLSEの方向性は時流に合っていると見る向きが多く、LSE投資家もリフィニティブ買収は前向きにとらえていると言われる。
  • 現時点では各社コメントを控えており、ロンドン証券取引所によるリフィニティ買収か、あるいは香港証券取引所によるロンドン証券取引所か、とぢらになるかはまだ未知数だ。
  • いずれになるにせよ、証券取引所の合従連衡は、今後も世界で続くことになりそうだ。

株式市場の最近記事

  1. 香港証券取引所、ロンドン証券取引所の買収を提案

  2. 米国でボルカー・ルールが一部緩和

  3. 世界中で100年債に向かう投資資金 日米も追随か

  4. なぜGEの株価は低迷しているのか 事業構造の変遷からの考察

  5. バーナード・マドフとハリー・マルコポロスとは何者なのか

コメント

  • コメント (0)

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

PAGE TOP