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  1. 企業動向

ドイツ銀行は破綻を免れるか

概要

解説

経営再建中の名門銀行

  • ドイツ銀行は1870年にベルリンで創設され、来年150周年を迎える歴史ある銀行だ。
  • ドイツ最大にして、欧州でもトップクラスの規模を誇る。
  • S&P グローバル・マーケット・インテリジェンスの調査によれば、2018年の資産額は 1兆7700億ドル で、世界15位。
  • そんな名門銀行だが、近年業績が大きく悪化し、現在経営再建の真っ最中だ。
  • 今年4月には、起死回生を賭け独コメルツ銀行との合併を画策したが、失敗。
  • 7月には、2022年までにグループ全体で1万8000人を削減し、投資銀行業務からほぼ撤退することを発表した。
  • ドイツ銀行のグローバルでの従業員数が約9万人であるため、20%もの人員削減を行うこととなる。

急激なグローバル化
と投資銀行化が招いた危機

  • ドイツ銀行は、1980年代までは、名門の商業銀行だった。
  • 商業銀行とは、預金で集めたお金を融資に回したり、決済を代行することで手数料を貰ったりする、伝統的な金融サービスを手掛ける銀行のことだ。
  • ドイツではVWやダイムラーに代表されるような優秀な民間企業がおり、彼らへの融資や、場合によっては株の持ち合いなどによって、大きな収益を上げていた。
  • ところが、ドイツ銀行は80年代の終わりごろから、グローバル化に向けて舵を切り出した。
  • まず手始めに、1989年に英モルガン・グレンフェルを買収した。
  • さらに、ヒルマール・コッパー氏が頭取になると、1994年に「国際的な投資銀行を目指す」と宣言し、投資銀行部門の人材を引き抜いてくるようになった。
  • その流れの中で、1998年には米バンカーズトラストも買収した。
  • 華々しくグローバル化・投資銀行化へと舵を切ったドイツ銀行だったが、これが同社を苦しめる原因となった。
  • 外部から引き抜いてきた人材の統制が効かず、様々な不正が横行してしまったためだ。

住宅ローン担保証券(MBS)
不正販売で72億ドルの和解金支払い

  • 最初に発覚したのは、住宅ローン担保証券(MBS)の不正販売だった。
  • 2000年代前半、ドイツ銀行も他の銀行同様、MBSを販売していた。
  • MBSは、住宅ローンを受け取る権利を債権化したものだ。
  • 当時人気の商品で、ドイツ銀行もその販売を行っていた。
  • しかし、住宅価格の下落や、「サブプライム層」の中で債務を返済できない人が続出したことで、MBSが不良債権化。
  • MBSを抱えるリーマン・ブラザーズなどの金融機関が大損害を被り破綻、リーマンショックへとつながった。
  • リーマンショック後ドイツ銀行は、ずさんな審査に基づき住宅ローンをMBSに組み込み、リスクを十分に説明せずに販売したとして、米司法省や住宅保有者/ローンの債務者からの支払いを求められた。
  • 2016年、ドイツ銀行は米司法省と合意し、罰金などとして72億ドル(8500億円弱)を支払うこととなった。

LIBOR不正操作事件で
25億ドルの和解金を支払い

  • 次に発覚したのは、2012年に英国で複数の金融機関がLIBORを不正操作していた事件だった。
  • LIBORは、市場で行われている金融取引の実勢金利をベースに作られている金利のことで、世界中の金融取引で使われる金利の基準値になっている。
  • そんなLIBORを、ドイツ銀行の デリバティブ取引担当者らが、 2003-2010年ごろにかけて操作し、顧客や取引相手に損害を与えていた疑いが持たれている。
  • これが発覚したことで、ドイツ銀行はニューヨーク州当局、米商品先物取引委員会(CFTC)、米司法省、英金融行動監視機構(FCA)から訴えられ、計25億ドルもの和解金を支払うこととなった。

マネーロンダリング問題
でも今後炎上する可能性あり

  • さらに現在、ドイツ銀行は巨額のマネーロンダリングを行った疑惑を追及されている最中だ。
  • 2016年に流出した「パナマ文書」の情報から、ドイツ銀行の行員が、タックスヘイブン(租税回避地)で、多額のマネーロンダリングを行っている可能性が浮上した。
  • 具体的には、ドイツ銀行がタックスヘイブンで顧客の会社設立を支援し、犯罪行為に絡む資金を自行口座に送金させ、洗浄した疑いだ。
  • 2016年だけでも 英領バージン諸島 で3億1100万ユーロ(約400億円)の取引を処理した疑いがもたれ、2018年からドイツ当局による取り調べを受けている。
  • さらに米国の議会では、ロシア新興財閥オリガルヒとの取引でドイツ銀行のマネーロンダリング対策が不十分だった可能性があることが判明しており、新たな火種となりそうだ。

不慣れなグローバル
投資銀行業務を縮小することにした

  • 結局ドイツ銀行は、不慣れなグローバル化・投資銀行化を急激に進め、新たに採用した人材を統制しきれなかった結果、至る所で不正が起き、莫大な制裁金や和解金を支払わされることとなった。
  • その結果、冒頭で述べたように、2022年までにグループ全体で1万8000人を削減し、投資銀行業務からほぼ撤退することを発表した。
  • そして、商業銀行として長年やってきた伝統的なビジネスに回帰しようとしているのだ。


法人向け/個人向けのいずれも
収益は期待できない

  • しかし、世界中で超低金利となっている現在、法人への融資による収益は期待できない。
  • どこの国でも金余りで、貸出金利が極めて低いためだ。
  • それでは、個人向けはどうかというと、こちらも厳しそうだ。
  • 独では、貯蓄銀行と、信用組合銀行という2つの存在が、圧倒的な店舗網を誇っている。
  • 貯蓄銀行は、所有者が独地方自治体となっており、業務に公益性が求められる銀行だ。
  • 一つ一つの貯蓄銀行は、活動範囲を所有者である地方自治体の行政区域内に制限されているが、相互に連携しており、合わせれば大きな規模になる。
  • もう一方の信用組合銀行は、預金規模は少ないが、店舗数は最も多い。
  • 元々は、産業革命期に失職の危機にあった農民や手工業者が共に助け合うためにできた組織で、地域に根差したサービスを展開している。
  • 支店網で圧倒的に優位なこの2つの銀行集団に対し、ドイツ銀行が対抗することは難しい。
  • それを証明するかのように、独国内で200以上の始点の閉鎖を検討しているのだ。

「リーマンショック以上」
のCDSという爆弾も抱えている

  • さらにドイツ銀行は、CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)という爆弾も抱えている。
  • CDSは国や企業に対する「保険」のような役割を果たしており、「保険料」に相当するプレミアムを支払う代わり、ある国や企業が破綻したら国債や社債を補償するものだ。
  • 例えば、ドイツはギリシャ国債に対するCDSを大量に保有しているが、もしギリシャがデフォルトを起こした場合、債権者に対してドイツが保証をしなければならない。
  • ドイツ銀行の負債総額は260兆円で、リーマン・ブラザーズの4倍以上の規模だ。
  • そのため、瀕死のドイツ銀行がCDSやマネーロンダリング問題で倒れれば、「リーマンショック以上」の経済危機が訪れると言われている。
  • もっとも、現実にそれが起こる可能性は高くない。
  • それは、各金融機関が複雑に繋がりすぎていていて、潰せないからだと言われている。
  • ドイツ銀行がギリシャ国債のCDSを保有しているように、ドイツ銀行のCDSを保有している金融機関もいる。
  • 仮にドイツ銀行を潰してしまえば、そのCDSを持っている銀行が潰れ、さらにその銀行のCDSを持っている銀行が潰れ…と連鎖を起こしてしまう。
  • そのため、潰すことができないのだ。

リストラ以外の道筋は
まだ見えていない

  • 結局ドイツ銀行は、マネーロンダリング問題やCDSといった爆弾を抱えながらも、その影響の大きさから破滅は回避される可能性が高そうだ。
  • しかし、「商業銀行への回帰」は低金利や、個人向け金融サービスの競争の激しさから道のりは険しい。
  • 当面はリストラによる経費削減を進めていくものと思われる。


<参考記事>
ボルカー・ルールが緩和される

世界中で100年債に向かう投資資金

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