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  1. 産業政策

インド政府、低迷する自動車販売に支援策を実施

概要

  • 8/23、景気悪化を受け、インド政府は新しい景気刺激策を発表した。
  • 年間約2千万ルピー(約3千万円)以上の所得がある海外投資家に課していた高額の税負担を免除するほか、スタートアップの所得税を軽減。
  • さらに自動車についても販売促進に向けた優遇措置を取る方針だ。

解説

落ち込むインド経済

  • インド経済の経済成長が鈍化している。
  • 2018年4-6月期に8.0%だった経済成長率は、2019年4-6月期には5.0%まで急落した。
  • 総選挙前の時期でインフラ支出が減ったことに加え、消費支出が減ったことが要因だ。
  • 実体経済を反映し、失業率は過去40年で最悪の6.1%まで上昇した。
  • 経済成長をてこ入れするため、インド準備銀行は政策金利を度々切り下げている。
  • 2019年だけで4回もの利下げを実施し、6月には2010年以来の低水準となる5.75%まで政策金利を引き下げだ。
  • しかし市中にマネーがまわらず、一向に景気回復の糸口は見えていない。

消費支出では自動車販売の
落ち込みが大きい

  • 消費支出の中では、特に自動車部門の落ち込みが大きい。
  • 2018年11月から、新車販売台数は9カ月連続で前年同月の実績を下回っている。
  • 直近の2019年7月の新車販売台数は約26万台で、前年同月の37万台から30%も下落した。
  • メーカー別では、インド最大の自動車販売台数を誇るスズキの落ち込みが大きい。
  • 同社の販売台数は9.8万台と、前年同月の15.4万台から約36%落ち込んだ。
  • 販売だけでなく、生産も不調だ。
  • 各社減産を迫られており、印大手自動車メーカーのマヒンドラは、2019年4-6月の間に、5-13日間、工場を停止させた。
  • 日産も販売台数の大幅減により、2019年度中に1700人の人員を削減する。

最大の要因は、
信用不安による貸し渋り

  • インドで自動車販売を押し下げている最大の要因は、ノンバンクが資金を貸し渋っているためだ。
  • これまでインドでは、個人が自動車を購入する際やディーラーが仕入れを行う際に、ノンバンクからお金を借りていた。
  • しかし、金融業界で不良債権が増加し問題になったことから、貸し渋りが横行した。
  • 不良債権が増加した構造的な理由は、2010年代に入ってからインドの経済成長率が鈍化してきたことに加え、世界経済の成長率も鈍化してきたことで、繊維、鉄鋼、インフラ部門の企業業績が悪化したためだ。
  • そうした企業に対して、インドの金融機関は積極的な貸し出しを続けたため、回収困難な債権が溜まっていた。
  • それを危惧したインド政府は、2015年度から不良債権に対する引当金を計上するよう一部金融機関に命じた。
  • そうして、不良債権が顕在化した。
  • 現在インドの金融業界は信用不安の只中にあり、ノンバンクもリスクを恐れ、資金を貸し渋るようになっている。
  • 既に述べたとおり、インド準備銀行は政策金利を切り下げているが、貸し渋りがボトルネックとなり、資金は市中に出回っていない。
  • それに加えて、自賠責保険料の引き上げや燃料価格の上昇が組み合わさり、自動車の販売が急落している。

自動車に対する支援策を実施

  • 落ち込む自動車販売に対し、インド政府は複数の経済政策の実施を決めた。
  • まず、実施を予定していた車両登録料の引き上げを2020年6月まで延期する。
  • さらに、2020年3月末までに購入される全ての車両の減価償却率を現行の2倍となる30%に引き上げる。
  • これによって、買い替えサイクルを短縮するとともに、中古車市場の活性化を図る。
  • さらに、インド政府は老朽化した公用車の買い替えも容認する。
  • これまでは支出削減のため、省庁に対し公用車の買い替え禁止を命じており、どうしても老朽化した場合でも、レンタカーを使わせ、買い替えは認めていなかった。
  • しかし、今後はそれを容認する。
  • こうした支援策を通じて、自動車の販売を促進していく考えだ。

国内経済を
回す仕組み作りが重要

  • インドは輸出依存度が低い国で、経済成長は内需で決まる。
  • 現在世界経済は米中貿易摩擦で先行きが不透明になっているが、インドは他の国ほど影響を受けないのが特徴だ。
  • そのため、着実に国内経済を回復基調に乗せられるかがカギとなる。
  • そのためには、既に述べた消費刺激策だけでなく、企業側に対する支援も必要だ。
  • 一つは、貸し渋りの是正だ。
  • この点、インド政府は目配せをしており、現在10行ある国営銀行を4行に統合し、より安定的な資金供給を図ろうとしている。
  • さらに、景気を回復基調に乗せるためには、現在減っている公共事業も増やす必要がある。
  • こうした政策を行えば、大きな景気後退や経済成長の停滞には至らないという楽観的な見解が主要メディアの論調だ。
  • ただし、インドでは2010年代のGDP成長率などのが経済統計が改ざんされていたことが強く疑われている。
  • 仮にこれが事実だと判明した場合は、ある程度の波乱が起こると予想される。

<参考記事>
南アの自動車産業政策

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