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  1. 産業政策

スパコン「京」7年の活動に幕 後継は「富岳」

概要

  • 9/2、理化学研究所は、スパコン「京」の稼働を停止させ、シャットダウンした。
  • 「京」は2011年に演算能力で世界一に輝き、その後7年間、多くの研究分野でシミュレーションを行うために貢献してきた。
  • 後継は「富岳」で、2021年から稼働する。

解説

「京」登場までのスパコンの歴史

  • 世界でスパコンが登場したのは1960年代だった。
  • 1960年代に米CDC社の「CDC」が登場し、続く1970年代には米クレイリサーチ社が、世界ではじめてベクトル演算ができる「クレイ」を開発した。
  • 1980年代に入って、ようやく日本もこの競争に参加するようになった。
  • 1981年に通産省が「スーパーコンピュータープロジェクト」をスタートさせると、既に十分な技術力を蓄積していた日本メーカーは、すぐに開発に成功した。
  • 1982年には、富士通が「FACOM 
    VP-100/200」を、日立が「HITAC 
    S-810」を開発した。
  • さらに1983年にはNECも「SX-1,SX-2」を開発した。
  • そこから更に技術開発が継続されたことで、1980年代後半から90年代半ばまで、日本のスパコンは世界一の性能となった。
  • この期間は毎年、富士通、日立、NECのいずれかが、世界最高の演算速度を達成していた。
  • しかし、安全保障や経済活動の競争力に大きく関わるスパコンにおいて、日本が躍進することを、米国はよしとしなかった。
  • 今日の国際関係を見れば、日米は強固な関係で結ばれた同盟国であり、米国最大のライバルは中国である。
  • しかし、当時は日本が大きく成長し「ジャパンアズナンバーワン」と言われ、米国が日本を脅威と感じていた時代だった。
  • 現在米国が華為(ファーウェイ)の製品の調達を禁止し、関税をかけるのと同様に、当時は日本のコンピュータ関連製品にアンチダンピング税をかけ、調達を中止した。
  • そうした政治的な逆風もあって、1990年代後半からは、米国のIntelやIBMに首位の座を奪われるようになってしまった。
  • さらに、この時期は日本が得意としていたベクトル演算という演算手法が、徐々にスカラ演算という新しい演算手法に移り変わる時期でもあった。
  • 日本がこの変化にすぐに対応できずにいる間に、米国企業はスカラ演算に切り替えて演算能力を高めていった。
  • 日本勢は地盤沈下を免れえず、2000年代は米国企業の後塵を拝すこととなった。

そして「京」が登場した

  • 日本がスパコンで低迷していた2000年代、日本勢はただ指をくわえて待っていたわけではなかった。
  • 文部科学省は2005年に理研とスーパーコンピュータープロジェクトを立ち上げ、高性能の汎用計算機「京」の開発に踏み切った。
  • 当初はベクトル機とスカラ機の「複合型」を計画していたが、2009年にベクトル機を担当していた日立とNECが撤退してしまった。
  • そのため、理研と富士通だけで、スカラ演算のスパコンを作ることになった。
  • 捲土重来を図り、開発にまい進していた理研・富士通だったが、思わぬ逆風に吹かれた。
  • 部品の量産を目前に控えた2009年11月、政権を取った民主党から事業仕分けの対象とされ、開発が凍結されてしまったのだ。
  • 開発陣は愕然としたが、この決定には各所から反論が巻き起こり、後に予算が復活した。
  • そうして波乱を乗り越えた「京」は、2011年6月および11月に、演算速度ランキング「TOP500」で、でついに世界1位に輝いた。
  • そして、2012年6月に「京」は正式に完成したのであった。

「京」のこれまでの実績

  • 「京」は当初から、特定用途ではなく、汎用の計算機を目的として開発された。
  • そのため、「京」が貢献した分野は、地震・津波、気象、宇宙、ものづくり、材料開発、創薬など多岐に渡る。
  • これまでに民間企業200社以上、研究者のべ1万人以上が「京」を利用した。
  • あくまで一例に過ぎないが、2012年には筑波大などが、宇宙形成に関わる暗黒物質(ダークマター)」の粒子のシミュレーションを行った。
  • また翌2013年には理研が「京」を使って超高解像度で地球全体の雲の動きをシミュレーションすることに世界で初めて成功。
  • その後も地震・津波のシミュレーションや、心臓の活動を分子レベルで再現する生命科学の分野など、「京」はあらゆる分野のシミュレーションに使用されてきた。

「富岳」が2021年から
後継機として稼働する

  • 「京」の後継機である「富岳」は、2021年から、「京」が稼働していた神戸で稼働し始める。
  • 「富岳」の演算能力は、「京」のさらに100倍以上になると想定されている。
  • それ自体は大きな進歩だが、「富岳」は演算能力だけに焦点を当てた競争はしないようだ。
  • 2011年に「TOP500」で首位になった「京」も、わずか1年後にはその座を米国勢や中国勢明け渡し、復権することはなった。
  • 軍事技術も見据えて莫大な研究開発を行う米国や中国に、正面から演算能力だけで勝負することは年々難しくなっている。
  • 「富岳」は、単純な演算速度ではなく、7年間の「京」運用を通じて培った、実用性で勝負する。
  • 実は、「京」は「TOP500」では年々順位を下げていたが、ビッグデータ解析などのより実用的な速度を競う「グラフ500」というランキングでは、2015年以降ずっと1位だった。
  • また、ソフトウエアの使いやすさなどを競う「HPCG」というランキングでも、2016年に1位を取っている。
  • さらに、「京」を使うためには、研究者は自らプログラムを作らなければいけなかったが、「富岳」では、この手間を簡略化し、研究者の負担を軽減する。
  • 「富岳」という名は、富士山からきており、裾野が広がることをイメージして名付けられた。
  • 「富岳」は、その名の通り、単純な演算能力だけではなく、利用環境やその他の魅力によって多くの研究者に利用してもらうことを目指している。
  • 今後「富岳」が多くの企業や研修者に利用され、世界中で技術進歩が実現することが期待されている。

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