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  1. 企業動向

集合知 vs 自前主義(2) グーグルマップ vs 日本のナビ企業

概要

  • MaaS(Mobility as a Service、アプリによる交通サービスのこと)の進展でデジタル地図の重要性が増している。
  • これまで、地図はカーナビなどのナビゲーションサービスに組み込まれる構成要素の1つに過ぎなかった。
  • しかし、スマホの地図アプリが利用されるにつれ、地図アプリが逆にナビゲーション機能を組み込むようになり、両者の立場が逆転しつつある。

解説

MaaSでは地図アプリが
移動の入り口になる

  • MaaSは時間軸に応じて、2種類のデジタル地図を必要とする。
  • 現在既に必要とされているのは、カーナビや、地図アプリなどで使われている2次元のデジタル地図だ。
  • これは、人間が読むためのもので、自分や目的地の位置を確認するために使用される。
  • 将来必要とされるのは、自動運転やドローン飛行など使用するための、3次元デジタル地図だ。
  • これは、自動車など機械側が読み込みためのもので、自己位置や目的地を把握し、その情報に基づき自らの動きを制御する。
  • 2次元デジタル地図は既に商用フェーズで、3次元デジタル地図はまだ開発フェーズということだ。
  • MaaSにおいては、2次元デジタル地図を使った地図アプリがあらゆる移動の入り口になりつつあり、その重要性は日に日に増している。

スマホの普及で地図と
ナビサービスの主従が逆転した

  • スマホが登場する以前、移動経路を検索するためには、カーナビや乗換案内などのナビサービスを利用することが大半だった。
  • ナビサービスは、現在地と目的地を入力することで、交通手段別の、最適な移動経路を知ることができる。
  • しかし、スマホが登場して以来、カーナビや乗換案内を使用する人の割合が徐々に減少している。
  • その理由は、多くのユーザーがスマホに搭載されている地図アプリを利用するようになったためだ。
  • 日本では2010年代からスマホが普及し始めた。
  • 個人のスマホ保有率は 2011年に15%程度だった が、2017年には60%を超え、大半の人がスマホを持つようになった。
  • そして、その過程で「グーグルマップ」や「アップルマップ」などの地図アプリの利用が増え、経路検索方法に変化が現れ始めた。
  • 初めの頃は、①まず地図アプリで目的地を探し、②その目的地をカーナビなどのナビサービスに入力して経路検索をする、という使い方がされた。
  • やがて、徐々に地図アプリメーカーが経路検索機能を付加し始めた。
  • すると、利用者は次第に、①地図アプリで目的地を探し、②そのまま地図アプリで経路検索も行う、という使い方に変わっていった。
  • 地図アプリが顧客接点を握り、経路検索はその一機能に成り下がり始めたのである。

目的地情報の量と鮮度で
ナビサービスを圧倒した

  • なぜナビサービスは、顧客接点を地図アプリに奪われてしまったのだろうか。
  • それは、目的地探索においても、経路検索においても、地図アプリに対する優位性を築くことができなかったからである。
  • ナビサービスの提供価値は大きく分けて、目的地探索機能と、目的地までの最適経路を検索する機能があるが、既存のナビサービスは特に前者が苦手だった。
  • 例えばカーナビは、一部の有料サービスを除けば、その大半がコストの制約から通信機能を持つことができなかった。
  • 通信機能がなければ、外部のサーバーからガソリンスタンドや店舗といった目的地のデータを呼び出すことができない。
  • そのため、カーナビは、自らの内臓メモリに投入可能な、限られた数の目的地データを保存することしかできなかった。
  • その結果、カーナビの目的地候補に関するメニューには、「ガソリンスタンド」や「飲食店」の有名チェーンなど、限られた候補だけが並ぶことになってしまった。
  • しかもそうした「押し着せ」の目的地データは、更新機会が少なく、ユーザーは情報の鮮度を心配しながら使用しなくてはならなかった。
  • その点、地図アプリの目的地情報の量と鮮度は圧倒的だった。
  • グーグルマップやYahoo!地図を開いた状態で検索ワードを打ち込めば、無数の目的地が出てくる。
  • しかも、目的地の営業時間や口コミなど、豊富な関連情報にもすぐアクセスできる。
  • さらに、それらは最新の情報だった。
  • これはカーナビの事例だが、乗り換え案内など他のナビサービスにおいても、目的地探索機能は極めて薄弱だった。
  • 地図アプリは目的地探索という弱点を持つ既存のナビサービスを、その情報量と更新頻度で圧倒し、移動の「入り口」における顧客接点を獲得していった。

経路検索機能でも、
ナビサービスと拮抗

  • さらに、地図アプリは既存のナビサービスが得意とするはずの経路検索機能でも決して劣らない実力を持っている。
  • それは、「集合知」の活用によって、高性能な経路検索を可能としているためだ。
  • 例えば、既存のカーナビは、VICSという、インフラに基づく交通情報を元に経路検索を行なっている。
  • VICSでは、道路に設置されたビーコンが道路を走る車を感知し、どの道路を、どの車が、どれくらいの速度で走っているかを算出し、カーナビにその情報を送信している。
  • こうしたインフラに基づく渋滞予測は位置情報が正確だが、一つ弱点がある。
  • それは、予算制約上ビーコンを一般道の一部分にしか設置できず、計測できない道路が沢山あるということだ。。
  • そのため、一般道では、渋滞状況や予想到着時間が不正確になるという事態が起きる。
  • 一方で、その弱点を克服したのが、地図アプリだ。
  • 地図アプリは、スマホのGPS位置情報やセンサーによる補正情報を元に車両の位置や速度を計算している。
  • そのため、ビーコンが設置されていない道路であっても、車の運転状況を把握することができる。
  • その結果、「グーグルマップの方がカーナビより到着予想時刻が正確」と言った声が聞かれるようになった。
  • さらに、バスや電車などの乗り換え案内においても、既存サービスとそん色のないレベルの案内を出すことができるようになった。
  • 従来のナビサービスの牙城である経路検索でも、地図アプリは拮抗する実力をもっているのだ。

地図アプリは検索エンジン
と同じビジネスになる

  • 地図アプリは既に、目的地探索と、車、鉄道、バス、あらゆる移動手段を組み合わせた経路検索を担っている。
  • 目的地も経路検索もワンストップで行えることで、グーグルの検索エンジンと同じ広告料収入のビジネスモデルが発展しうる。
  • 例えば、ユーザーがグーグルマップを開き、適当なワードで検索をすると、グーグルは飲食店や買い物施設、レジャー施設などの目的地をお勧めする。
  • 顧客がその目的地へ行けば、グーグルは相応の広告料収入を得ることができる。
  • さらに、その目的地までの移動手段をお勧めして実際に使われれば、そこからも広告料収入を得ることができる。
  • これは絵空事ではなく、米国では、既にグーグルマップからウーバーヤリフトと言ったライドシェアサービスへの送客が行われている。
  • ウーバーがIPOを果たした際、2016-2018年の間にグーグルに支払った費用を公開した。
  • この期間中、ウーバーがグーグルに支払ったグーグルマップ使用料は5800万ドルだった。
  • それに対して、支払った広告料はそれをさらに上回る6億3100万ドルだった。
  • 実に10倍もの費用を支払ったことになる。
  • 改めて、グーグルが広告の会社だと実感させられる出来事だ。
  • 日本企業がせっせと地面にビーコンを設置し、自前主義でしっかりとした品質のカーナビや経路検索システムを作っている間に、グーグルは「集合知」でそれを抜き去った。
  • カーナビメーカー、自動車メーカー、鉄道会社、ジョルダン、ナビタイム、ヴァル研などの企業は、相互に提携しながらいくつものMaaSアプリを投入している。
  • しかし、圧倒的なユーザー数と目的地情報を持つグーグルマップの力は強大だ。
  • 「移動の検索エンジン」という広告料収入を生み出す巨大な商機は、既にグーグルの手に落ちている。


<参考記事>
グーグル vs 日本企業①地図企業

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