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  1. 企業動向

集合知 vs 自前主義(1)グーグルマップ vs 日本の地図企業

概要

  • これまでグーグルは、日本の地図企業が足で稼いだ情報を活用して、グーグルマップを作っていた。
  • しかし、2019年3月、グーグルマップは突然日本の地図企業最大手ゼンリンとの契約を打ち切ったとの報道が流れた。
  • グーグルマップは利用者から取得したデータという「集合知」を活用し、自ら地図を作り出す方向に舵を切り出したと思われる。
     

解説

2次元デジタル地図の仕組み

  • 2次元デジタル地図は、様々な地理的情報を重ね合わせることで作られている。
  • まず、あらゆる地図の基盤となるのは国土地理院の地形データだ。
  • 山や河川といった自然の地形が、デジタル地図の土台となる。
  • その上に、日本デジタル地図協会の道路情報や、鉄道軌線、行政区画などが重ねられる。
  • さらにその上に、住宅、商業施設や信号機、標識、駐車場、電話番号といった情報が重ねられ、地図が出来上がる。
  • こうした、基盤地図に重ねられる情報は「地物(じもの)」と呼ばれ、地図会社は他社と棲み分けながら、こうした情報を集めている。
     

足で稼ぐ情報が競争力の源泉

  • 日本の代表的な地図企業は、4社に絞られる。
  • なお、厳密には「地図調整企業」と呼ばれるが、あまり浸透していない呼び方なので、本稿では「地図企業」と呼ぶ。
  • 国内最大の地図企業は、住宅情報に強いゼンリンだ。
  • 全国に配置している調査員が、住宅地や商店街をくまなく調べ、建物に入居している人物や企業、その電話番号などを調べている。
  • トヨタ子会社のトヨタマップマスターや、パイオニア子会社のインクリメントPは、その次に大きい。
  • 両社は元々カーナビ向け地図を作っており、信号機や標識などの地物を足で稼ぎ、工事などで道路が変更されていれば道路情報も修正する。
  • このように、日本の地図会社は労働集約的で、地道な仕事によって地図作りを行ってきた。
  • なお、もう一社はNTT子会社のNTT空間情報だが、ここでは航空地図によって地図を補正しているのが特徴で、上記3社とは若干毛色が異なる。
     

グーグルもアップルも、日本の
地図企業のデータに頼ってきた

  • こうした日本の地図企業のデータは「グーグルマップ」や「アップルマップ」「Yahoo!地図」などIT企業の地図にも使用されてきた。
  • グーグルは自分で地図を作る能力があると言われているが、厳密には自社でできる工程とできない工程がある。
  • 例えば衛星写真や航空写真の解析、路面を走らせた車が撮影した「ストリートビュー」の作成などは自社で行なっている。
  • 一方で、店舗の名前や電話番号などの個々の地物に関する情報は、日本の地図会社から購入して使用してきた。
  • 地道な調査が必要で正確性を求められるこうした情報は、IT企業の苦手とする領域である。
  • これは他のIT企業も同様で、アップルもYahoo!も、日本の地図企業から地物に関するデータを購入している。
     

グーグルマップが
日本の地図企業を「卒業」した?

  • そんな地図業界に異変が起きたのは2019年3月だった。
  • グーグルが、それまでゼンリンから購入していた住宅情報などのデータの大半の購入を停止すると決めたとの報道が流れたのだ。
  • 日本の地図企業といういわば「プロ」が作った情報を買うのではなく、グーグルマップユーザーからのフィードバック情報という「集合知」を使って地図を更新していく方針に切り替えるものと思われる。
  • 例えば、工事によって新しい道路ができた場合、これまではトヨタマップマスターやインクリメントPなどの地図企業が、すぐに現地を確認し、地図を修正していた。
  • それに対し、グーグルマップの場合は、ユーザーがクルマを走らせ、いざ道が間違っていれば、グーグルマップに「間違っている」とフィードバックを送ることができる。
  • さらに、グーグルがその利用者の位置情報を辿れば、実際にどの道を進んだかがわかり、それを正しい道として地図を修正することができる。
  • さらに、グーグルは衛星写真や航空写真から自動で地図を生成する技術も日々高度化させており、それらと組み合わせて地図を作る方針だ。
     

「集合知」で作られた地図も
使われるためには十分

  • 「地図には正確性が求められるため、地図企業が足で稼いだ正確な情報が必須だ」日本の地図業界では、こうした声が根強くあった。
  • しかし、実際には、正確さが必要な地図と、そうでない地図がある。
  • 例えば、一般消費者が使う有料のカーナビや、営業開拓のために法人が買う地図では、正確さが求められる。
  • しかし、多くの人が利用するグーグルマップやアップルマップは無償で提供されている。
  • そうした無料の地図で多少不正確な情報があっても、問題にはならない。
  • 実際、グーグルマップがゼンリンのデータの使用をやめた後も、一般ユーザーはグーグルマップを使い続けており、今後も利用を続けるだろう。
     

グーグルの地図生成能力に
いずれ誰も追いつけなくなる

  • グーグルマップは、グーグルが仕掛けた壮大なフリーミアム(多くの人に無料でサービスを提供する代わり、他の手段で収益を得ること)だ。
  • グーグルはこれまで、ゼンリンなどから有料でデータを購入し、消費者には無償でグーグルマップを使わせてきた。これまでの収益は当然赤字だ。
  • しかし、集合知による地図生成技術は日々進歩している。
  • アルゴリズムの改良などで、いずれ正確性、価格、即時性、いずれの面においても日本の地図企業に対する優位性を確立する日が来るだろう。
  • その時、もはや誰もグーグルに勝つことができなくなり、グーグルには独占企業としての巨大な利益が約束される。
  • そして、労働集約的な地道さを強みとしてきた日本の地図企業のビジネスモデルは、完全に行き詰まることになる。
     


<参考記事>
グーグル vs 日本企業②ナビ企業

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