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  1. 企業動向

「スタバ超え」狙う中国ラッキンコーヒー、売上も赤字も拡大

概要

  • 8/14、中国のコーヒーチェーンの瑞幸珈琲(ラッキンコーヒー)が2019年4-6月期の決算を発表した。
  • 営業損失は6億9000万元(約103億円)となり、前年同期の約2倍に拡大した。
  • ラッキンコーヒーは、店舗拡大と販促費増大により、売上も赤字も昨年より拡大している。

解説

ラッキンコーヒーとは

  • ラッキンコーヒーは、2017年10月に創業した、中国で急成長している新興コーヒーチェーンだ。
  • すさまじい勢いで拡大を続けており、初出店の2018年1月から1年足らずで、既に3000店を突破している。
  • 2018年7月には、中国史上最速でユニコーン企業(評価額10億ドル以上の未上場企業)となり、その後2019年5月には早くもIPOを果たしNASDAQに上場した。
  • ラッキンコーヒーは、いま中国で最も勢いがある会社の一つだ。

CEOは配車サービス出身の
女性起業家・銭治亜

  • ラッキンコーヒーのCEOは41歳の銭治亜(チエン・ジーヤー)だ。
  • 彼女は1999年に武漢紡織大学を卒業し、その後北京大学でMBAを取得している。
  • 意外にも、彼女がこれまで働いてきたのは、コーヒーやカフェとは直接関係のない業界だ。
  • ラッキンコーヒーを立ち上げる以前は、中国レンタカー大手のCAR Inc.を経て、ライドシェア大手の神州優車でCOOを務めていた。
  • 神州優車時代の同僚は、銭治亜を「菩薩のような顔で、雷のように働く」と例えている。
  • 長時間労働の中で、彼女はコーヒー愛好家になったと言われている。

「スタバ超え」を目指し
猛烈な勢いで出店

  • ラッキンコーヒーは、創業当初から、中国で売上No.1コーヒーチェーンのスターバックスを、店舗数でもコーヒーの販売数でも追い抜くことを目標に掲げてきた。
  • そしてその方針通り、ラッキンコーヒーはすさまじい勢いで出店を続けている。
  • 2018年1月に北京に1号店を開業すると、2018年12月末には2000店を達成した。
  • その後も破竹の勢いで出店を進め、2019年8月現在、その店舗数は3000を超えた。
  • スターバックスが中国市場に参入してから20年経った現在、ようやく3600店に到達したことに鑑みれば、「異常」とも言えるスピードだ。

躍進の背景に爆発的に伸びる
中国のコーヒー消費量

  • ネスレの記事でも触れたとおり、現在の中国は年率15%でコーヒー市場が成長している
  • グローバル平均が年率2%程度の成長であることに鑑みれば、極めて速い成長スピードだと言える。
  • その理由は、中国国民の平均所得が向上していることで、徐々に嗜好品であるコーヒーを嗜む人が増えているためだ。
  • なおNHKの報道によれば、中国での爆発的な消費の増加で、今後コーヒー豆が不足してくる可能性が高い。
  • それほどまでに、中国のコーヒー消費量は拡大している。

デジタル技術を活用した
ビジネスモデル

  • スターバックスを追い抜くことを目標に掲げるラッキンコーヒーだが、そもそもスターバックスとはビジネスモデルが大きく異なる。
  • まず、ラッキンコーヒーでは、専用のアプリからしかコーヒーを注文することができない。
  • 決済をアプリ上で済ませ、店舗側で商品の準備ができると、通知が来る。
  • 通知が来たら、注文者が店舗までコーヒーを取りに行く仕組みだ。
  • また、注文したコーヒーは店舗で受け取るだけではなく、デリバリーサービスで届けて貰うこともできる。
  • その場合、ラッキンコーヒーと契約している配達事業者であるSF Express社が、注文した商品を概ね18分以内に届けてくれる。
  • デリバリーが発達している、中国らしいサービスだ。
  • それゆえ、店舗で客がくつろぐことに力点はおいておらず、店舗面積は小さい。
  • そして、コーヒー一杯の価格はスターバックスより安い。
  • ただでさえ価格が安い上に、顧客獲得のため、常にアプリから値引きクーポンを大量に発行しており、顧客の多くが、無料またはそれに近い低価格でコーヒーを飲んでいる。

「店舗の雰囲気やスタッフの接客」
が武器のスターバックスと対照的

  • こうしたビジネスモデルは、スターバックスとは大きく異なるものだ。
  • スターバックスは、家でも職場でもない、くつろげる「第三の場所」を目指し、洗練された店舗に、良い品質の商品や行き届いた接客を提供している。
  • 90年代の米国では、「早い、安い、おいしくない」というコーヒー店が大半だった。
  • そこにスターバックスは、少し高いが、洗練された店舗においしいコーヒー、親しみやすいバリスタの接客などによって、それまでになかったコーヒー店を展開し始めた。
  • 日本にスターバックスを持ってきたサザビーリーグの鈴木陸三・角田雄二兄弟も、90年代に米シアトルにあったスターバックスを訪ね、バリスタが振る舞うおいしいコーヒーと店の雰囲気に惚れ込み、日本に持ってくることを決意した。
  • それらがスターバックスのコアコンピタンスであり、世界の一大コーヒーチェーンとなり、やや物販に重きを置くビジネスモデルとなった今も、その方針は大きく変わっていない。
  • スターバックスは、洗練されたセンス、居心地の良い店内、フレンドリーなスタッフといった「ソフト」な魅力で勝負している。

ラッキンコーヒーの成長には
懐疑的な意見もある

  • ラッキンコーヒーは中国発の一大コーヒーチェーンとして期待されている一方で、持続的な成長に対して懐疑的な意見もある。
  • ラッキンコーヒーは集めた莫大な投資資金を湯水のごとく、新店舗開店と顧客獲得のためのクーポン発行、アプリ開発の技術開発などに使っているためだ。
  • 確かに多くの顧客がラッキンコーヒーで注文し、売上は日増しに増えているが、それは、大幅な値引きによるものだ。
  • そのため、2018年12月期の決算は売上8億4000万元(約140億円)に対し、最終損益は32億元(約530億円)の赤字で、売上の3倍以上の赤字を叩き出している。
  • 直近の2019年4-6月期決算では、営業損失だけで6億9000万元を計上しており、2018年を上回るペースでの赤字だ。
  • 更に、2年で3000店というあまりに急激な出店ペースは、サービス品質の維持が難しくなるという懸念もある。
  • こうした懸念から、IPO直後に急激な伸びを見せたラッキンコーヒーの株価は、その後大きく下がり、今も低迷している。

ラッキンコーヒーは
コーヒーを提供するIT企業

  • ラッキンコーヒーの事業を見ると、銭治亜CEOはやはり配車サービス業界の出身であり、そこでCOOとして経営のかじ取りを行っていたころの感覚がかなり残っているように思える。
  • 銭治亜CEO が在籍していた配車サービス企業は、「デジタルディスラプター」の一種だ。
  • 「デジタルディスラプター」とは、デジタル技術を活用し、既存の産業を破壊していく企業のことだ。
  • 例えば配車サービスのウーバーは、デジタル技術を使って大規模にドライバーと乗客をマッチングし、タクシー料金より遥かに安い移動サービスを実現した。
  • これによって、既存のタクシー業界は激しい価格競争に晒され、破壊されつつある。
  • ポイントは、ウーバー自身も赤字であることだ。自社が赤字を垂れ流しながら、既存の業界を破壊していくのが「デジタルディスラプター」なのだ。
  • それが可能なのは、ウーバーの将来性を見込んだ投資家たちから、莫大な投資資金が絶えず流入しているからだ。
  • デジタル技術を活用したサービスでは、最初の赤字期間に耐えきり、最終的にその市場の覇者になれば、莫大な利益を享受できると考えられている。
  • デジタルなサービスでは、利用者が多いほど利用者の便益が高まるという「ネットワーク効果」が働くため、1極集中=独占市場になりやすいためだ。
  • その段階まで至ったのがGAFAであり、 各国が独禁法を活用して取り締り始めた ことからも、独占企業がいかに大きな利益を得られるかがわかる。

デジタル技術の活用が
事業の成長を支える

  • IT企業の性質を持つラッキンコーヒーは、今後デジタル技術をどのようにサービス改善や新規事業に活用できるかが事業の成長を決める。
  • 同社は既にアプリを通じて、顧客属性や、購入された商品、金額、時間帯などの需要に関するデータや、配達という物流のデータを取得する仕組みを構築している。
  • そうしたデータを蓄積することで、まずは本業のBtoCのコーヒー事業のサービス改善を行い、顧客の定着を図るだろう。
  • そして事業を続けるうちに、BtoB向けに、自社顧客基盤から他社への送客サービスや広告サービス、デリバリーデータを活用した物流企業支援サービスなどを提供する可能性が開けてくる。
  • それは例えば、莫大な赤字を垂れ流しながら個人向けに無償で地図を提供しつつ、広告料収入で儲けているグーグルマップのようなビジネスモデルだ。
  • フリーミアム(無料サービス)で顧客を囲い込み、長い赤字の期間を投資資金で耐え切ることができれば、ラッキンコーヒーには、スターバックスとは全く異なる、新たな事業展望が待ち受けている。

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