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  1. 企業動向

独バイエル、買収したモンサントの除草剤で発がん性の疑い、賠償額は80億ドル

概要

  • 農薬大手の独バイエルは、買収したモンサントが販売していた除草剤「ラウンドアップ」に発がん性があるとして、米国で訴訟を起こされている。
  • バイエルは、被害があったと訴える1万8千人に対し、総額80億ドル(約8500億円)を支払う方針を公表した。

解説

業界再編の動きの中、
バイエルがモンサントを買収

  • 2016年、米国の化学製品部門で市場シェア首位のダウと、2位のデュポンが合併し、世界最大の化学企業、ダウ・デュポンが誕生した。
  • 主な狙いは、開発投資競争に耐えうる規模の追求だった。
  • 農薬業界は、医薬品業界と同じく、ヒット商品を開発し続けるために、莫大な開発投資を必要とする。
  • 両社は過酷な開発投資競争を勝ち抜くため、規模を追求し合併した。
  • 2017年6月には、中国化工集団(ケムチャイナ)が、スイスの名門シンジェンタの買収を完了した。
  • それ等の動きに追随するかのように、2018年6月には、独農薬大手のバイエルも、米種子大手のモンサントを660億ドル(6.8兆円)で買収した。
  • バイエルとモンサントの合併は、単なる規模の追求だけではなく、「バイエルの農薬と、モンサントの種子を一体的に提供する」というビジネスモデルを実現するためのものでもあった。
  • こうして、現在の農薬業界はこの3強と独BASFを加えた「4極体制」になっている。

悪名高い「モンサント」の名前を
社名に残さなかったバイエル

  • モンサントは、史上最も嫌われていた企業の一つと言われる。
  • その理由は、歴史上、人体に悪影響を及ぼす薬剤を数多く開発してきたためだ。
  • 例えばモンサントは、1940年代から60年代まで、ノミやシラミを駆除するための殺虫剤であるDDTを世界中で販売した。
  • DDTは対外に排出されにくく、蓄積した成分が発がんや内分泌系の異常を起こす影響を持っていた。
  • 人体への悪影響が判明し1970年代から徐々に使用が制限されたが、それ以前にDDTを浴びた多くの人たちが後遺症に苦しむこととなった。
  • さらに、ベトナム戦争では枯葉剤を開発し、ベトナムの森林を枯らしただけでなく、多くのベトナム人や米軍兵士に重い後遺症を遺した。
  • 有名なベトちゃんドクちゃんを生んだ枯葉剤も、モンサントが開発に携わっていたものだ。
  • これらは一例に過ぎず、モンサントは他にも多くの薬害被害を出している。
  • こうした経緯から、モンサントは世界有数の「嫌われている企業」や「悪徳企業」としてその名を馳せてきた。
  • バイエルは規模の追求と事業の相互補完性のためにモンサントを買収したが、社名にその名を一切残さなかった。
  • それは、あまりに悪いモンサントのブランドイメージを考慮してのことだっただろう。
  • ところが、大規模な薬害訴訟が起きたことで、モンサントの名前が再び脚光を浴び始めている。

グリホサート入り除草薬
「ラウンドアップ」の
発がん性を訴える訴訟が始まった

  • バイエルがモンサントの買収を決めた2016年の前年、異変が起きていた。
  • 国際がん研究機関(IARC)が、「ラウンドアップ」に含まれる成分であるグリホサートを発がん性物質のグループ「2A」に分類したのだ。
  • IARCは、発がん状況の監視や発がん原因の特定などを行うWHOの専門機関で、発がん性物質を5段階の基準に分類している。
  • 「2A」は発がん性が5段階で2番目に高く、動物実験では発がんに関する十分な証拠があり、人間への発がん性についても限定的ながら証拠があるという水準だ。
  • 「ラウンドアップ」は、モンサントが1974年に販売を開始して以来、その強力な除草力でベストセラーとなった商品で、世界中に利用者がいた。
  • そのため、この報告以降、バイエルに対する、「ラウンドアップ」使用者からの訴訟が相次いだ。
  • 2017年に800人程度だった原告の数は、2018年には数千人にまで増加していった。

原告団は1万8000人、
賠償総額は80億ドルまで増加

  • 健康被害を訴える人は今年に入っても増え続けている。
  • 2019年8月現在でバイエルは1万8000人に対し、総額80億ドルを賠償する必要があると見積もっている。
  • バイエルは、660億ドルで買収したばかりのモンサントの負の遺産によって、80億ドルの出費を強いられることとなった。
  • さらに、社名から消したはずの「モンサント」という負のブランドが、再び脚光を浴び、復活してきてしまった。

仏やオーストリアでは
グリホサートの規制が始まる

  • 現状では、日本や米国、EUは、グリホサートの発がん性に対して否定的だ。
  • 欧州食品安全機関(EFSA)は2015年11月に、日本の内閣府食品安全委員会は2016年7月に、米環境保護局(EPA)は2019年4月に、それぞれグリホサートの発がん性を現時点では認めない見解を発表している。
  • しかし世界では、グリホサート規制に向けて動き出している国もある。
  • 農業大国の仏では、2018年にマクロン首相が「2021年までにグリホサートを主原料とした除草剤の販売を禁止する」と発表。2019年1月には「ラウンドアップ」を販売禁止にした。
  • オーストリアでは、 2019年7月に下院でグリホサートの国内使用を全面禁止する法案が可決された。
  • その他、食料の一大消費地であるインドやブラジルなど、世界20か国以上で規制に向けた動きがあると言われている。
  • 今後グリホサートの発がん性を肯定する研究結果が増え、世界中でグリホサート販売の禁止が進めば、モンサントの不名誉な歴史に新たな1ページが加わることとなる。
  • 「ラウンドアップ」の訴訟によって、バイエルが消したかった「モンサント」の名前は、人々の意識に強烈に蘇ってきている。
  • 訴訟の金銭的費用もさることながら、バイエルのブランドイメージも大きく傷つけていることだろう。

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