1. 企業動向

日本橋三越、「世界最高のおもてなし」を目指し店舗改修を進める

概要

  • 地盤沈下する百貨店業界において、三越は「世界最高のおもてなし」を目指し、高級路線化に舵を切っている。
  • 2018年は日本橋三越本店を隈研吾の手により30年ぶりにリニューアル。2019年8月には、紳士売り場を30年ぶりに大幅改装した。

解説

売上が減り続けている日本の百貨店業界

  • 三越の取り組みを語る前に、まずは日本の百貨店業界の概要を振り返りたい。
  • 百貨店業界の売上は減り続けている。
  • バブル崩壊が始まった1991年に9兆7100億円あった売上は年々減少し、2018年には5兆8800億円まで減少した。
  • 最大の要因は、アパレルの売上低下に対してまともな打ち手を打てずにここまできてしまったことだ。
  • それに加え、少子高齢化や東京一極集中によって、地方の購買力が落ちていることも一因だ。

高度経済成長期をアパレル業界と共に成長してきた百貨店業界

  • 日本の歴史を振り返れば、百貨店とアパレルは軌を一にして成長を続けてきた。
  • 高度経済成長期には、「1億総中流」と形容された日本の中間層が、「頑張れば手が届く贅沢」に憧れた。
  • 住宅やクルマは簡単に買えなかったが、ファッションはまさに「頑張れば手が届く贅沢」だった。
  • そして、そのファッションを買える特別な場所が百貨店だった。
  • 百貨店でお気に入りの洋服を買う、というコトが消費者の憧れだったのだ。
  • 高度経済成長期を経た80年代から90年代にかけて、アパレル業界はその絶頂を迎えた。
  • 服をあたかも芸術作品のように販売する「DCブランド」が一世を風靡し、多くの人が服に大金を使い買い漁った。
  • そして、アパレル業界の恩恵を受け、百貨店も黄金期を迎えた。
  • 何せ、当時百貨店の売上の大半は、ファッションだったのだ。
  • 1991年に百貨店業界の売上は9兆7100億円を記録し、ピークを迎えた。

バブル崩壊後のファストファッション台頭でアパレル業界と共に沈んだ

  • 1990年代前半にバブルが崩壊すると、アパレル業界は大打撃を被った。
  • それまでに多数存在した中間層が没落していき、一部の富裕層と、大多数の庶民との二極化が進んでいった。
  • その結果、大多数の消費者の財布のひもは固く締められた。
  • そんな中、新しいコンセプトを持つアパレルブランドが台頭してきた。
  • スーツでは、洋服の青山が低価格攻勢をかけることで、サラリーマンの顧客を奪っていった。
  • さらに、カジュアルファッションでは、無印良品やユニクロといった、庶民的なコンセプトを持つブランドが台頭してきた。
  • 特にユニクロはSPAと呼ばれる、企画から製造、販売までを一貫して行うビジネスモデルで、圧倒的なコスパで殴り込みをかけてきた。
  • 既存のアパレル企業は、服を作るための各工程が細分化され、バラバラの中小企業によって作られていた。
  • そうした非効率的な生産体制では、新しく台頭してきた「デフレ時代の勝者」たちにコストパフォーマンスでとても太刀打ちできなかった。
  • そうしてアパレル業界は、バブル崩壊を経て「賢い消費者」と化した顧客を、ことごとく奪われていくのをただ見守ることしかできなかった。
  • こうしてアパレル業界が沈む中、その販売に収益の多くを頼っていた百貨店も沈んでいった。
  • 歴史を振り返れば、両者は栄枯盛衰を共にした仲間だったのだ。
  • その上百貨店業界は、「ZOZO TOWN」などのECサイトにも顧客を奪われることとなった。
  • 売上を維持できなくなった百貨店はその後経営統合が進んだ。
  • そして、現在の三越伊勢丹HD、Jフロントリテイリング、高島屋、H20リテイリング、そごう・西武の5社体制に落ち着いた。

延命措置となったインバウンドによる「爆買い」

  • ビジネスモデルの抜本的な改革を行えないまま苦しむ百貨店各社に、2000年代後半から神風が吹き始めた。
  • 中国をはじめとする諸外国からの観光客がものすごい勢いで増加し始め、彼らによる「爆買い」が始まったのだ。
  • 2011年に8000億円程度だった訪日外国人の旅行消費額は、2018年には4兆5千億円まで増加した。
  • この過程で百貨店では訪日外国人が化粧品やブランド品を「爆買い」していき、百貨店各社の首をつないだ。
  • しかし、爆買いもいつかは成長の限界がやってくる。さらに世界経済の減速懸念も不安要因だ。
  • 百貨店各社は依然として、抜本的な経営の改革に迫られていることは変わらない。

三越は既存の百貨店の在り方を変える

  • そんな中、三越は他社に先駆けて自社の進むべき道を明確にした、と筆者は捉えている。
  • 一言で言えば、それは富裕層ビジネスに舵をきったということだ。
  • 2018年、三越は30年ぶりに日本橋本店を隈研吾のプロデュースによってリニューアルした。
  • 伝統ある店内は、白を基調とする高級感のある店内に生まれ変わった。
  • テーマは、「世界をときめかせる、もてなしの技。 新しい日本橋の、三越本店。」だ。
  • これまでは、大丸に行こうが伊勢丹に行こうが、どこも似たような百貨店だった。
  • しかし三越はこれを打破し、差別化を図ろうとしている。
  • 通常、百貨店の中のテナント同士はライバルで、顧客を奪い合う関係だ。
  • しかし、日本橋三越では可能な限り売り場のしきいを無くし、ブランド間の垣根を無くす。
  • さらに「コンシェルジュ」と言われる280人ものアドバイザーを用意し、店舗横断で、顧客をトータルコーディネートする。
  • 個々のテナントの利益ではなく、顧客満足の最大化が優先される。
  • 店舗やブランド横断で個人をトータルコーディネートすることは、本質的にはこれまで外商が行なってきたサービスを店舗に持ってくることだ。
  • この方針を取る理由の一つは、プライバシーを気にして自宅まで商談に来てほしくない顧客が増えていることが挙げられる。
  • しかしもう一つの理由は、外商に訪問させるほどではないが、そこそこの買い物をしてくれる「プチ富裕層」を取り込むための取り組みだ。
  • 三越は「コンシェルジュ」の取り組みを、顧客の所得水準が高い日本橋本店でテストし、うまくいけば都市部の他店舗にも広げて行く方針だ。
  • 地方の店舗でも、従来の百貨店像を打破すべく改修を進める方針だ。
  • そこで目指すのは、「1階に化粧品売り場、2階に婦人服売り場、最上階にレストラン」といった、ステレオタイプを壊し、新たな百貨店を構築することだ。
  • 投資家の中には、大規模改修の費用が回収できるのか疑問に思う人が多く、最近の三越伊勢丹HDの株価は低調だ。
  • しかし、これまで旧態依然とした経営スタイルを変えられなかった百貨店業界の中でいち早く、自らの針路を明確化できたことは称賛に値するのではないだろうか。
  • 三越の取り組みを契機として、百貨店各社が事業モデルの革新に取り組むことが期待される。

  <参考>

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