1. 企業動向

テスコが4500人をリストラ、世界の小売でもトレンド広がる

概要

  • 8月5日に英スーパー最大手のテスコは、従業員のうち、4500人をリストラすると発表した。
  • テスコに限らず、カルフール、ウォルマートなど、近年、世界的にスーパーのリストラが進展している。

解説

英テスコは世界トップ10
に入る巨大小売チェーン

  • テスコは全世界に6800の店舗と45万人以上の従業員を抱える巨大小売チェーンだ。主な事業は小売ではあるが、そのほかに金融、電気通信、ガソリンスタンド、通信販売なども手がけている。
  • 2017年のテスコの売上は639億ポンド(8兆円以上)で、本国の英国では、シェアが31.8%に達し、王者として君臨する。カンターコンサルティングによれば、2018年時点での小売売上ランキングは、全世界で10位にランクインしている。
2018年の上位10社による小売売上ランキング/出所:KANTAR CONSULTING “TOP 50 GLOBAL RETAILERS”より著者作成
  • 以前は「世界5大チェーン」の1角とも言われていたが、近年、トルコのKipaを始めとする事業を売却し、順位を下げた。
  • 日本にも一時期出店していたが、経営不振により2011年撤退し、残されたテスコの店舗はイオンが買収している。

ネットスーパーに
変革を迫られたテスコ

  • テスコのおひざ元である英国は、実はEUで最もネット通販の利用が盛んな国だ。2017年に行われたEU統計局の調査では、英国で回答した8割以上の人が、1年に1回ネットで商品を購入しており、その割合はEU加盟国の中で最も多かった。
  • 英国のネットスーパーの市場規模は、2012年以降年率10%以上成長を続けており、少なくとも2022年までは10%以上の伸びが継続すると予想されている。
  • そんな中、既存の小売スーパーや百貨店はネットスーパーに顧客を奪われており、王者テスコも変革を迫られている。
  • テスコは手始めに、駅近に出店しているテスコ・メトロの在庫を圧縮し、店舗運営を効率化することを決めた。
テスコ・メトロ/出所:Mtaylor848 [CC BY-SA 4.0 (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0)], Wikimedia Commons
  • さらに、ガソリンスタンドに併設してある小型店であるテスコ・エクスプレスの営業時間も短縮することを決めた。
テスコ・エクスプレス/出所:Editor5807 [CC BY 3.0 (https://creativecommons.org/licenses/by/3.0)], Wikipedia Commons
  • これらによって、英国では4500人もの人員が不要となり、リストラすることとなった。

英セインズベリー、
アズダなどスーパーも同じ苦境

  • 英国で業界2位のセインズベリーと3位のアズダ(米ウォルマートの100%子会社)は、大規模化による生き残りを図るため、以前合併を画策していた。しかし2019年5月、寡占による弊害を懸念する英国競争市場庁(CMA)の判断で、統合は認められず頓挫した。現在両社は、次の一手を迫られている最中だ。
  • 業界4位のモリソンズは、アマゾンと提携し、自社の生鮮食品の即日配送を実施することで、売上を確保する道を選んだ。一部の商品の売り上げについては、顧客接点をアマゾンへ譲り渡したことになる。

英百貨店はデベナムズを
始めとして破綻し始めている

  • 英国では、スーパーだけでなく百貨店も苦境に陥っている。
  • 2018年8月にハウス・オブ・フレーザー(HOUSE OF FRASER)が破綻すると、2019年4月には1778年創業の老舗・デベナムズも会社管理手続きを申請し、破綻した。いずれも、時代に合わなくなってきたECへの参入が遅れたことが要因と見られる。デベナムズは大型化で対抗しようとしたが、凋落は止められなかった。
  • 一方、ECと組むことで生き残ろうとしている百貨店もいる。それが老舗百貨店のマークス・アンド・スペンサー(M&S)だ。ネットスーパーのオカドと共同出資で「オカド・ドットコム」を立ち上げ、2020年9月までに、自社の食料品をネット上で販売する。オカドは、70万人以上の顧客を抱えるネットスーパーであり、M&Sの流通チャネルを補強するだろう。
  • しかし、オカドの強みはネット上の顧客接点だけではない。生産性が高い自動倉庫に強みを持っており、このシステムを他社に提供しているのだ。
  • オペレーションでも、ネット上の顧客接点でも、既存スーパーは新興企業に負け始めている。

仏カルフールも2400人
リストラし中国から撤退

  • 仏でも、ネットスーパーの影響で既存スーパーが方向転換を迫られている。
  • 業界4位のカジノは、2019年2月に34店舗の売却を発表。
  • 続く2019年4月には、業界6位のオーシャンが仏国内の21店舗を売却すると発表し、翌月にはイタリア事業も売却すると発表した。
  • 仏最大手のカルフールは、注力している中国でアリババのネットスーパーやウォルマートとの競争に敗れ、2018年に撤退を宣言した。結局2019年6月に中国家電量販大手の蘇寧易購集団に買収され、その過程で2400人もの従業員がリストラされた。同月、カルフールは本国の仏で、グーグルと戦略的パートナーシップを締結した。このパートナーシップにより、グーグルのECサイトである「グーグル・ショッピング」を通じて自社の食料品を販売することが決まった。仏の雄カルフールは、グーグルのプラットホームである「グーグル・ショッピング」で食料品を販売する、欧州で初めての企業となった。

米ウォルマートは既存事業を売却しつつ
ECやテック系企業を買収

  • 米国では、王者ウォルマートが、構造改革を急いでいる。
  • ウォルマートは年間の売上高が56兆円以上(2019年1月期)で、世界最大の小売企業だが、欧州の小売チェーン同様、ネットスーパーの攻勢を受けており、変革を迫られている。そのため、昔から持っていた海外の小売事業を次々に売却しようとしている。このあたりはテスコと同じ流れだ。
  • ブラジルでは、2018年6月に400店舗以上を持つ自社小売事業を、米投資ファンドに売却した。英国では、上述の通り、100%子会社のアズダを、セインズベリーとの合併を通じて売却しようとしたが、CMAに阻まれてしまったため、現在はアズダを上場させ、保有株式を売却しようとしていると言われている。日本では、2019年6月に、現在親会社を務める西友の株式を徐々に手放すために、上場を検討していると発表した。西友を上場させた場合は、徐々に株を売却し手放していくものと見られる。
  • このように、ウォルマートは今後大きな成長が望めない事業の売却を進めている。その一方で、成長領域に対する投資は積極的だ。
  • 2016年のジェットコム買収に始まり、女性向けアパレルECのモズクロス、シューズ洋品店のシューズドットコム、アウトドア用品店のムースジョー、男性向けアパレルECのボノボスなどのECサイトを次々に買収している。2018年には、インドの大手ECサイトであるフリップカートを1.7兆円で買収した。こうしたECサイトの買収は、既にウォルマートの売上の成長に寄与している。
  • さらにウォルマートは、ECサイトだけでなく、アドテック(広告技術)を持つポリモーフラボや、SNSを分析する技術を持つコズミックスなどのテック系企業も買収している。IT技術を用いて消費行動に影響を与えることで、アマゾンなどのネット通販に対抗するつもりだと思われる。
  • ウォルマートを突き動かしているのは、自らを変革しなければ、革新的な企業(ディスラプター)に滅ぼされてしまうという危機感だ。ウォルマート以外の小売事業者にも、単にネット販売を強化するだけではなく、新たな技術やビジネスモデルによって、顧客への提供価値を高める積極的な経営が求められている。

  <参考>

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