1. 企業動向

アップル、iPhoneに中国BOEの有機ELパネルを採用へ

概要

  • アップルは、iPhoneの中核部品である有機ELを、中国パネル最大手の京東方科技集団(BOE)から調達する方針だ。
  • 現在最終調整中で、年末までに調整が完了する。

解説

有機ELメリット

  • 有機ELとは、電圧をかけると素材が発光する、有機化合物でできた電子材料だ。
  • 従来から使われている液晶パネルは、画面の後ろからライトを点灯して初めて画像が映る。しかし有機ELは、材料が自ら発光するため、背面のライトが不要となる。その分、有機ELを組み込む製品を薄く、軽く、省電力に作ることができる。
  • そのため、最近はスマホやテレビでの普及が進んでいる。さらに、今後は自動車やパソコンにも搭載が拡大していくことが期待されている、重要な素材だ。

アップルの狙いは
有機ELの調達価格低下

  • 競争戦略としてアップルがBOEと組む狙いは、有機ELの調達先を複線化することでサプライヤー同士を競わせ、調達価格を下げることだ。
  • 現在有機EL市場は、サムスンとLGディスプレーの2社が世界シェアの96%を占める寡占市場となっており、両社の価格交渉力が強い。
  • アップルは現在、有機ELの大半をサムスン、一部をLGディスプレーから調達しているが、BOEからも調達すれば、既に納入している2社も、ある程度の値下げに応じざるをえなくなる。

米中貿易摩擦による追加関税も
BOEと取引を進めた一因

  • さらに、今回BOEを選ぶ要因となったのは、米中貿易摩擦による追加関税だ。
  • 2019年12月に発動される予定の「第4弾」制裁関税にはスマホが含まれ、中国で生産しているiPhoneは、米国に輸入する際に10%の追加関税がかかることになる。
  • ただでさえ販売不調のiPhoneを値上げすれば更なる販売の落ち込みが懸念されるため、アップルは追加関税分のコストを商品に転嫁せず自分で負担するつもりだと思われる。そのため、追加関税分をコスト削減で相殺しようと躍起になっている。
  • 有機ELはiPhoneの製造コストの3割を占める高価な部品だ。その有機ELを値下げできれば、iPhone全体の製造コストを下げることができる。
  • アップルがBOEから調達する有機ELの価格はサムスンより2割程度安いと言われる。今後サムスン、LGディスプレーの有機ELも値下げさせられるかがアップルの収益を決めることになりそうだ。

BOE採用で一層不透明に
なったJDIの再建計画

  • BOEとアップルの取引を喜べないのが ソニー・東芝・日立製作所の中小型液晶ディスプレイ事業を統合し2012年に誕生した 「日の丸ディスプレー」のJDIだ。
  • JDIはこれまで、売上の6割を占めるアップルを主要顧客として、得意の液晶パネルを納めてきた。しかし、近年iPhoneの販売不調により液晶パネルの販売が減少。さらに、iPhoneに有機ELの搭載が増えたことで、JDIが得意とする液晶パネルの搭載率も徐々に減少している。
  • 液晶パネルの販売減少でJDIは現在経営が立ち行かなくなっており、金融支援を募っている。そんな中、アップルがJDIに対して100億円の支援を行う準備を進めていることがわかった。
  • 当初この支援は、JDIから有機ELを調達しサムスンをけん制するためだという憶測が流れた。しかし、当面はJDIではなくBOEがその役割を担うことになりそうだ。
  • JDIは今後有機ELを販売する戦略を描いているが、BOEの有機ELが採用された分だけJDIの有機ELの受注可能性は減ってしまう。
  • 半導体産業同様、有機ELも、設備投資の金額とタイミングが勝敗を決めると言われる。JDIが中長期的に生き残るためには、サムスンやLGディスプレー、BOEとの設備投資競争についていくことが必要だ。そのためには投資の原資が必要であり、当面は大口顧客のアップルからの受注増が求められる。
  • アップルは2020年以降に投入する全機種に有機ELを採用するとの観測が広がっているため、JDIはアップルから有機ELの受注を獲得していくことが経営再建の必須条件となりそうだ。


  <参考記事>

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