1. 産業政策

中国「北斗」、人工衛星の稼働数が米国を抜き世界一位に

概要

  • 8月19日に報道された日本経済新聞の調査で、中国の人工衛星の稼働数が米国を上回ったことがわかった。
  • 世界130か国において、その国の上空で最も人工衛星が多い国は中国となった。

解説

人工衛星の稼働数で米国を追い抜いた中国

  • グローバルに衛星測位を行うことができる衛星測位システムは、米国のGPS、ロシアのグロナス、欧州のガリレオ、そして中国の北斗に限られる。日本の準天頂やインドのIRNSSも、自国周辺しか観測することができず、測位範囲においてはこうした国々にかなわない。
  • 中国は、人工衛星の稼働数が35基となり、31基の米国を追い抜いた。
  • 衛星の多さは、観測範囲の広さのみならず、位置情報の精度向上にもつながる。一般に、位置情報を得るためには、最低限4基の人工衛星と通信することが必要と言われる。しかし、人工衛星が常時通信可能な位置にいるとは限らず、建築物などに阻まれて通信できないこともある。そこで、4基以上の衛星を持ち、沢山の衛星と通信できる環境を作ることが、もしもの時の「冗長性」となり、精度向上に貢献する。

20年以上、多額の資金と労力をつぎ込んだ中国

  • ようやく宇宙で米国に肩を並べ始めた中国だが、20年前はまだ自前の衛星測位システムすら持っていなかった。
  • しかし、米国製のGPSに頼らない衛星測位システムを作るため、1994年から人民解放軍の防空システムとして北斗の開発に着手。かつて航海士たちが自分の位置を確かめるために目印とした北極星にちなんで、システムは北斗と名付けられた。
  • 7年の開発期間を経た2000年、中国は北斗初の衛星を打ち上げ、国内専用の衛星測位システム北斗1号の運用を開始した。
  • その後、2011年に北斗1号を民間に開放すると、2012年には、北斗2号を開始し、アジア地域に位置情報の提供を始めた。
  • そして2018年、北斗3号の基本システムが完成し、ついにグローバルにサービスを展開し始めた。
  • 宇宙強国になるという明確な目的意識と、20年以上にわたる多額の投資によって、中国の衛星測位システムは強くなった。
  • さらに、2020年までに12基の衛星を発射し、システムの能力を一層引き上げる計画だ。

北斗の性能改善が進む

  • 北斗とGPSの間の性能差は、徐々に縮小してきていると言われる。
  • 稼働数ベースの基数では中国が逆転し、精度も、数年以内に追いつくと言われている(2018年に始まったグローバルサービス展開では、まだ10m程度の誤差がある)。
  • それに加え、北斗には、独自の強みがあると言われる。
  • 1つ目は、GPSを阻む巨大な国内市場があることだ。中国国内ではGPSの利用を制限しているため、衛星測位に北斗を使う。そして、中国は世界最大級の消費市場だ。そのため、多くの企業が中国市場で売る通信端末は北斗に対応せざるを得ない。中国国内で販売されるスマホの多くは、ファーウェイ、シャオミ、ワンプラス(OPPO傘下)などの地場メーカー製を含め、多くが北斗に対応している。最近は、諸外国でも北斗の利用が進んでいるため、中国以外の市場においても、この傾向は強まっている。
  • 2つ目は、北斗が双方向でデータを送受信できるという、独自の機能を持っていることだ。これによって、端末と衛星の間でショートメッセージの送受信ができる。

民間利用で米国と競争する中国

  • 北斗が中国で活用されることが期待されている分野は多岐にわたるが、その一つが自動運転技術だ。
  • 測位サービス企業の千尋位置網絡有限公司は、精度が2-5cm級になる補正情報を送るサービスを提供する。これは、中国国内で「北斗地上強化基地」を2200か所設置したことで可能になった。こうした補正情報と組み合わせた高精度位置情報は、自動運転技術に活用されると思われる。
  • 衛星通信対応のIoTモジュールを製造する クアルコムやSTマイクロエレクトロニクスなどの企業も、北斗の電波を受信できる 車載用半導体を発売し始めている。
  • さらに、一帯一路や、中東・アフリカを含む30カ国以上が北斗の位置情報を実際に活用している。パキスタンでは軍が北斗の衛星測位システムを取り入れ、チュニジアでは無人トラクターの自動運転走行を実施した。こうした活用事例は、IoTやAIと組み合わさり、様々なサービスを生み出す可能性が高い。
  • 米中が貿易摩擦で火花を散らす中、人工衛星というフロンティアでも、両国間の熾烈な競争が繰り広げられている。1990年代、米国がインターネットを無料開放すると、それを基盤とするIT革命が米国で起きた。その延長線上に、現在の米国IT企業の隆盛がある。
  • 衛星測位システムから取得する高精度位置情報もまた、派生産業が多数生まれると思われることから、米中はそれも見越して覇権を争っている。

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