概要
- 現在世界中で、投資先を失った資金が、100年債に流れ込んでいる。
- 100年債は金利変動リスクも、発行元のリスクそのものも背負うが、資金流入の勢いは止まらない。
解説
100年債とは
- 100年債とは、償還が100年後となる債権のことだ。
- 100年債は、そもそもあまり一般的な債権ではない。
- その理由は、100年もの間債権を持つと、途中で金利が変動するリスクや、発行元(国債であれば国)が消滅する、あるいは通貨への信認が失われるといったリスクを長い間負わなければいけないためだ。
- 例えば、この100年の間に、日本は戦争に負けた。
- 戦時中は戦時国債という債権を国民が買うことで戦費を賄っていたが、終戦を迎え、国民が一気に払い戻しを受けると、ハイパーインフレによって、紙屑同然の価値しか持たなくなってしまった。
- 100年債は、こうしたリスクを持っているのだ。
なぜ100年債が買われているのか
- 既に述べた通り、100年債はあまり一般的な債権ではない。
- しかし、それでも最近買われているのは、高い利回りが魅力となって投資家を引き付けているためだ。
- 近年の債権市場では、世界的にリスク回避傾向が強まり、株式市場から国債市場に資金が流入している。
- そして、その結果、国債の長期金利が低下し、中には利回りがマイナスの国債も生じ始めた。
- そんな中で、利回りが高い100年債は、投資家にとって利ざやが稼げる貴重な商品となり、買われるようになった。
- 当然長期保有した場合のリスクはあるが、投資家は、短期間の間に100年債を売買することで、リスク軽減を図ろうとしている。
オーストリア国債が好調な一方、アルゼンチン国債は暴落
- 現在100年債を発行している国は、オーストリア、メキシコ、アルゼンチンで、その中でもオーストリアは成功していると言われる。
- オーストリアは2017年に100年債を利率2.1%で発行したが、現在は利率が1.2%前後まで低下している。
- それが意味するのは、100年債への需要が供給を上回っているということだ。
- オーストリアの国債が人気なのは、格付けがAA+(S&P、2019年7月31日時点)と極めて高い上に、利回りも高いためだ。
- オーストリアだけでなく、格付けがA-とやや低いメキシコの100年債さえも人気になっている。
- しかし、8/12に、香港で反政府デモが起こると、それが波及し、元々格付けがBと信用力が低いアルゼンチン100年債は暴落した。
- デフォルトを繰り返してきた歴史を持ち、信用力が低いアルゼンチンの100年債に応募が殺到したことからも、現在100年債はちょっとしたバブルになっていると言える。
米国や日本も追随する可能性あり
- 欧州では、イタリアやポーランドは50年債を既に発行したことがあるため、オーストリアに続いて100年債を発行する可能性がある。
- また、こうした流れに、米国や日本も追随する可能性がある。
- 米国政府は、50年債または100年債の発行について投資家にヒアリングを行うことが明らかになったためだ。
- ヒアリングの結果、もし需要が確認されれば、発行に踏み切る可能性がある。
- 日本では、三菱地所やJR東日本が民間企業として50年債を発行した。
- 民間の社債で50年債や100年債が定着していけば、国債でもそれを実施する可能性が出てくるだろう。
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