1. 株式市場

なぜGEの株価は低迷しているのか 事業構造の変遷からの考察

概要

解説

GEの黄金時代

  • GEは1878年にトーマス・エジソンが設立した米国の老舗企業である。創業当初は電球や蓄音機を売っていたが、時代とともにポートフォリオを組み替え、販売する製品を変えていったのがGEの特徴だ。
  • 時価総額ベースで見たGEの全盛期は、1990年代後半から、2000年代前半までである。この間、1996年、1997年、2000年、2001年、2003年、2004年、2005年と、計7年も、GEは時価総額世界一位に輝いている。
  • 90年代は、ジャック・ウェルチCEOが「脱製造業」を掲げ、市場シェア1位を取れそうな事業に絞って、多角化を推し進めていた。昔からあった小型家電部門や半導体部門を売却する一方で、金融企業を買収し金融子会社のGEキャピタルを作ったり、米テレビ放送局のNBCを買収し放送事業にも参入した。各事業は多様でありながら、事業同士である程度のシナジーを生むと言われていた。例えば、圧倒的なシェアを誇る製造業の事業+GEキャピタルによるファイナンスというスキームは強力な収益源となった。さらに、金融事業は、製造業事業の付帯サービスから、徐々に個人向けの消費者金融や不動産金融を行うようになり、大きな収益を生んだ。
  • このような経営スタイルが成功し、GEは一躍時代の寵児となった。 ウェルチの流れを汲み2000年CEOとなったジェフ・イメルトも、2000年代半ばまでGEの黄金期を享受した。

GEにとって転機となったリーマンショック

  • GEにとって転機となったのは2008年のリーマンショックであった。
  • GEキャピタルが、製造業から離れて独自に行っていた不動産金融や消費者金融が焦げ付き、巨額の不良債権をGEキャピタルに遺した。2007年には、GEの収益の50%以上を稼いでいた優等生のGEキャピタルは、砂上の楼閣だった。
  • リーマンショックがGEに遺した傷跡は深かった。GEキャピタルはウォーレン・バフェットを頼り30億ドルの増資をしてもらい、首をつないだほど打撃を受けていた。
  • イメルトは、これを機に、ウェルチ時代の路線を否定するかのように「製造業への回帰」を掲げ、独自の路線を歩み始めた。手始めとなったのがGEキャピタルの縮小だった。イメルトは、製造業の付帯サービスとしての金融サービス以外は徐々に売却し手放していった。

イメルトが「製造業への回帰」を掲げ事業売却と買収を積極化

  • その後、金融以外の非製造業の事業売却も進んだ。放送・映画事業は2013年までに、米CATV大手のコムキャストに売却した。
  • 一方で、イメルトは2015年に米メテム、仏アルストムのエネルギー部門を、2016年に韓国斗山建設の排熱回収ボイラー事業を相次いで買収した。この怒涛の買収の中に、後にGEを苦しめる「爆弾」が紛れ込んでいた。それが、仏アルストムのエネルギー部門である。GEはアルストムのエネルギー部門を1兆2500億円もの大金をはたいて買ったが、これは高値掴みだった。何故なら、その時すでに、火力発電コストが、他の発電方法に対して、価格競争力を失い始め、世界の火力発電所の建設需要が落ち込み始めていたからだ。その後、新エネルギーに押される形で世界の火力発電所の建設需要が減少し、買収時ののれんを償却できないと踏んだGEは、2018年に総額2兆5000億円もの減損を行った。
  • 東芝によるウエスチングハウス買収の失敗が東芝に壊滅的な打撃を与えたように、GEにとっても、アルストムのエネルギー部門買収が、今一番の問題になっている。

不発に終わったイメルトによる
「Industrial Internet」とデジタル化

  • イメルトは、「製造業への回帰」を掲げる中で、単に規模の拡大や、技術力の向上を狙ったわけではなかった。彼は、来るべきIoT時代を見越して、GEの製品をIoT化し、そこから得られるデータを通じて、保守管理などのソフトウェアを提供することを狙った。そのために2015年には産業向けIoTプラットフォーム「Predix」の開発を担う子会社であるGEデジタルを設立した。
  • [Predix」は、IoTをテーマに扱う書籍には必ず登場するほど、鳴り物入りで登場したが、実際の売れ行きは芳しくなかった。GEは産業機械を使う自社顧客にも他社顧客にも「Predix」を売り込んだが、既存システムからわざわざ「Predix」に乗り換える顧客は少なかったと言われる。
  • こうしてGEは、既存事業が大きく沈む中で、次世代ビジネスへの適合にもつまづいてしまった。

当面は航空機エンジン、
電力、再生エネルギーに専念

  • 2017年、イメルトの後を継いだジョン・フラナリーは、2018年6月に、航空機エンジン、電力、再生エネルギーを残し、後の事業は売却する方針を発表した。
  • その後2018年10月にCEOがローレンス・カルプに代わったが、この方針は継続されると思われる。2018年のGEの決算報告書によれば、セグメント別売上高構成比は、航空機エンジンが26%、電力が24%、再生エネルギーが8%だった。GEは、売上の6割を占めるこの3つの事業に、当面注力していく戦略だ。
  • そこには、ウェルチ時代にもてはやされたコングロマリットとしてのGEはもはや残っていない。コングロマリットでつまづいたのはGEだけではない。日本を含む多くの重電メーカーが同じ苦しみを味わっている。
  • 最近では、幅広いポートフォリオを持つ企業よりも、資源を有望事業に集中させ、一気に寡占状態まで行った企業の方が成功していると言われる。GEの株価低迷は、コングロマリットという時代に合わないビジネスモデルを取っていたGEが支払う、宿命的なコストなのかもしれない。

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