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バーナード・マドフとハリー・マルコポロスとは何者なのか

概要

解説

バーナード・マドフ事件とは

  • バーナード・マドフ事件とは、2009年米国で破綻した、650億ドルの巨大なねずみ講のことである。
  • 今これを取り上げる理由は、8/15にGEの不正会計を告発したハリー・マルコポロスが警鐘を鳴らし一躍有名になったのがこの事件であるからだ。

バーナード・マドフの人物像

  • バーナード・マドフは、1938年にニューヨークに生まれた。
  • 父方の祖父母はポーランドから米国に渡ったユダヤ移民で、マドフは、その3代目に当たる。
  • マドフが生まれた頃、米国のユダヤ人社会は、早い段階で西ヨーロッパから移民し既に裕福になっていたユダヤ系米国人と、比較的最近東欧から移民した貧しいユダヤ系米国人に分断されていた。
  • マドフは後者に属していたため、売春宿があるような貧しい地域で幼少期を過ごした。
  • その後、名門ファー・ロッカウェイ高校を経て、ホフストラ大学という、平均的なレベルの大学を卒業した。
  • ウォール街で金融のカリスマとして君臨したマドフだが、学歴は普通だった。
  • だが、マドフはハンサムで洒脱だった。
  • そして、カリスマ性があり人心掌握術に優れていた。
  • マドフと一度話した人は、皆彼に心を掴まれてしまったのだった。

マドフ事件の主な被害者は、彼と同じはずのユダヤ人

  • マドフが作ったマドフ投資の会の主な被害者は、彼の仲間のはずのユダヤ人だった。
  • まず個人の被害者では、スティーブン・スピルバーグ監督、ラリー・キング、ケビン・ベーコンなどのユダヤ系米国人が挙げられる。
  • これらは氷山の一角で、多くのユダヤ人の富豪たちが被害にあった。
  • また、企業でも、数えきれないほどの被害者が出た。
  • 日本人になじみのある銀行で言えば、バンク・メディチ、HSBC(香港上海銀行)、BNPパリバ、野村ホールディングス、あおぞら銀行などが被害にあっている。
  • マドフは、ユダヤ系米国人の成功者のリストを使い、それとは悟られないようにアプローチをしていた。個人も法人も、ユダヤ人脈でのつながりが多かった。
  • なぜ、自らもユダヤ系米国人でありながら、同じユダヤ系米国人を狙ったのか。
  • それは、彼が元々は恵まれない東欧系ユダヤ移民の子孫で、成功していた西ヨーロッパからのユダヤ移民を憎んでいたためではないかと言われている。
  • 日本人にはなかなかわからないが、当時の米国ユダヤ移民社会は、先に移民を果たした西ヨーロッパからのユダヤ移民が、後から来た東欧系のユダヤ移民を見下していたと言われている。

マドフ事件の詐欺のスキームは巨大なねずみ講

  • マドフは投資家から資金を集めても、まともに投資活動を行っていなかった。
  • そして、期日になると、実際には行っていない架空の取引記録を投資家たちに書面で送り、きっちりと配当を支払っていた。
  • しかし、そうした配当は投資による収益ではなく、新たな入会者から預かる投資資金によって賄われていた。
  • マドフ投資の会は、正しくねずみ講であった。

バーナード・マドフがねずみ講を継続させるために使った手口

  • バーナード・マドフは、ねずみ講をなるべく長続きさせるために、いくつかの策を講じていた。
  • まず、彼にしかわからない、秘密の投資術があるように投資家たちに伝えていた。
  • 投資術は、仕組みが複雑で投資家たちにはなかなか理解しがたかった。
  • しかし、マドフのカリスマ性と、マドフ投資の会のそれまでの実績が手伝って、投資家たちは本当に投資術があると信じた。
  • また、マドフは、投資家が自分たちのことをマドフ投資の会に参加できる幸運な「選ばれし者」だと錯覚するように振るまっていた。
  • 例えば、投資家に初めて会うときは、わざと気のないふりをして、マドフの方から入会を一度断っていた。
  • そうすることで、投資家の方から入会させて貰えるようお願いされるのであった。
  • さらに、マドフは投資家たちがマドフに疑問を持ったり質問をすることを許さなかった。
  • もしマドフに色々と質問をすれば、見せしめに入会を断ったり、退会させたりしていた。
  • そうすることで、マドフは絶対不可侵のカリスマとして君臨した。
  • 入会できた幸運な「選ばれし者」たちは安心し、喜んでマドフに全財産を投げ出したのであった。

ハリー・マルコポロスの告発を無駄にしたSEC

  • ここでようやく、ハリー・マルコポロスについて書きたい。
  • ハリー・マルコポロスは、1956年に米国ペンシルバニア州で生まれた。
  • その後、ボストン・カレッジでファイナンス修士を取得し、ウォールストリートで働き始めた。
  • 1999年、投資会社のRampart Investment Managementに勤めていた彼は、マドフ投資の会が安定収益を稼ぎ続ける理由を調査した。
  • 彼はたった5分資料を読んだだけで、マドフ投資の会がねずみ講だと直感した。
  • 2000年から2001年の間に、SECに3通のレポートを送ったが、SECは特に対応をしなかった。
  • 2005年、ハリー・マルコポロスは、マドフ投資の会がヨーロッパの銀行から借入をしようとしているとの情報を掴んだ。
  • 彼は、ねずみ講が資金不足に陥る前兆と似ていると考え、SECに、マドフ投資の会が詐欺組織だという内容の、新たな報告書を送付した。
  • ついにSECも重い腰を上げ、2005年の暮れからマドフ投資の会を調査し始めた。
  • しかし、SECは簡単な調査を行っただけで、マドフが詐欺を行っている証拠がないと結論付け、調査を打ち切った。
  • SECは、ハリー・マルコポルスが与えたチャンスをふいにしてしまったのであった。

リーマンショックによりマドフ投資の会が破綻

  • マドフは、致命傷になり得たハリー・マルコポロスからの告発を、SECの怠慢によって生き延びた。
  • しかし、ついに終焉を迎える時がやってきた。リーマンショックである。
  • 2008年にリーマンショックが起きると、マドフ投資の会の投資家たちが、次々に資金を引き揚げたいと言ってくるようになった。
  • 当初マドフは「資金を引き揚げれば今後投資をさせない」と脅しをかけ、いくばくかの資金引き揚げを食い止めていた。
  • しかし、リーマンショックによる資金の引き揚げはとても止めきれるものではなく、ついにマドフはもうマドフ投資の会を維持できないことを悟った。
  • 2008年12月、マドフは二人の息子を呼び出し、自分がねずみ講をやっていたことを告白した。
  • 二人の息子の依頼で弁護士がすぐにSECと連邦警察局に報告を行い、翌日マドフは逮捕された。
  • そして2009年3月にマドフは法廷で有罪を認め、25年間続いたねずみ講は、650億ドルもの被害を出し、泡と消えたのであった。

大企業が不正で突然潰れることもあると思い知らせてくれる事件

  • マドフ事件は、リーマンショックそのものの陰に隠れてしまい、日本では殆ど報道されなかった。
  • この事件を調べようとしても、日本語の文献では、アダム・レボー氏、副島 隆彦氏、古村 治彦氏による「バーナード・マドフ事件 アメリカ巨大金融詐欺の全容(2010、成甲書房)」くらいしかまとまったものがない。
  • しかし、この事件はエンロンやワールドコムのように、誰もが一目置く大企業も、不正によって突然潰れうるという教訓のために、広く知られるべきではないだろうか。
  • そして、その不正を、破綻の10年近く前に指摘していたのがハリー・マルコポロス氏だ。
  • 彼が、米国の老舗企業GEを現在巨額不正で告発していることの重みを、しっかりと認識したい。


<参考記事>
ハリー・マルコポロスの不正告発によるGE株価下落
リーマンショック後の投資規制であるボルカー・ルールが緩和

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