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GE株が一時15%安、ハリー・マルコポロス氏が380億ドルの不正会計を指摘

概要

  • 8/15、米国の会計専門家ハリー・マルコポロス氏が、GEが巨額な損失を隠すために不正会計を行っていると報告書を公表した。
  • 2001年に経営破綻したエンロン以上の不正を働いていると指摘したことで、8/15の米株式市場ではGE株が一時15%急落。最終的に11%安で取引を終えた。

解説

弱体化したGEにとって致命傷となりうる問題

  • トーマス・エジソンが創業した米国の老舗企業GEは、最近まで米国を代表するエクセレントカンパニーだった。
  • 特に、1990年代後半から2000年代半ばまでは、得意の製造業とともに、金融子会社のGEキャピタルが莫大な利益を生み、コングロマリットの成功モデルとしてもてはやされてきた。
  • ところが、近年はGEの経営が急激に悪化した。
  • 直接的な要因は、リーマンショックで成長エンジンだったGEキャピタルが停滞・縮小を余儀なくされたことと、「製造業への回帰」を掲げて買収した仏アルストムが高値掴みであったことだ。
  • GEは仏アルストムのエネルギー部門を2015年に買収したが、のれんを償却できないと見込み、2018年には2兆5千億円の減損を計上し、財務諸表を大きく痛めた。
  • 10数年前は成功モデルとしてもてはやされたGEのコングロマリット的経営手法が、通用しなくなっている点にGEの苦境がある。
  • しかし、今回のハリー・マルコポロスの告発は、それ以上に深刻な問題になりうる。
  • 彼によれば、GEは介護保険事業での不正な引当金などによって、380億ドルもの不正会計を行っているという。
  • これは、不正会計によって2000年代初頭に潰れたエンロンや、ワールドコム以上の金額だ。
  • しかし、ハリー・マルコポロスという人物のことがわからなければ、この告発の重みはわからない。
  • そこで、少し彼について書きたいと思う。

ハリー・マルコポロスとは何者なのか

  • ハリー・マルコポロスは、米国で起きたかの有名なバーナード・マドフ事件(マドフ事件)の不正を暴いた男だ。
  • 1999年、米国ボストンに拠点を置く投資会社Rampart Investment Managementに務めていたハリー・マルコポロスは、上司から、「マドフ投資の会」の資料を分析するよう命じられた。
  • 当時、バーナード・マドフが運営する「マドフ投資の会」は、ファンドの規模も大きく、毎年安定的に運用収益を出していたため、優秀なファンドと目されていた。
  • 世界の名だたる富豪や著名人も大勢加入し、「マドフ投資の会」の運営に疑問を持つ者は殆どいなかった。
  • しかし、実態は、巨大なねずみ講だった。
  • 「マドフ投資の会」の仕組みはこうだ。
  • ある投資家からまず100億円を受け取ったら、その投資家に対して毎年10%を「運用益」として渡す。
  • これだけならば普通の投資ファンドだが、「マドフ投資の会」は、なんと実際に投資をしていなかった。
  • では、いずれ足りなくなる原資はどこから調達していたのか。それは、新たに参加する投資家からの投資資金で賄っていた。まさにねずみ講だったのだ。
  • 資料に目を通したハリー・マルコポロスは、一瞬にして、「マドフ投資の会」がねずみ講だと見抜いた。
  • そして、 「マドフ投資の会」の不正に関するレポートをまとめ 、2000年から2005年まで、SEC(米国証券取引委員会)に「マドフ投資の会」はねずみ講だと訴え続けた。
  • しかし、SECは簡単な調査を一度行っただけで、「マドフ投資の会」を取り締まることはなかった。
  • ハリー・マルコポロス自身は2010年のガーディアンからの取材記事で、「単にSECに能力がなかった」「あるいは、マドフ投資の会が潰すにはあまりに巨大すぎた」旨の発言をしている。
  • それに加え、一般には、金融界で絶大な力を持っていたマドフを捜査することへのためらいがあったとも言われている。
  • いずれにせよ、ハリー・マルコポロスによる不正レポートは5回もSECに無視された。
  • しかし、思わぬ形で「マドフ投資の会」は終焉を迎えた。リーマンショックである。
  • 2008年にリーマンショックが起こると、投資家たちがこぞって資金を引き揚げ始めた。
  • 元よりねずみ講だった「マドフ投資の会」は資金の引き上げに加え、新たな投資資金も途絶え、これに耐えられず破綻した。
  • 25年間続いた巨大なねずみ講「マドフ投資の会」は、総額650億ドルもの投資資金を雲散霧消して終焉を迎えたのであった。

ハリーマルコポロスのGEに関する報告は、株式市場で一定の影響力を持つ

  • 上述のとおり、マドフ事件で、黙殺されようとも真実を主張し続けたハリー・マルコポロスは、巨大企業の不正を見抜き、戦ってきた実績がある。
  • 単に不正を見抜く目をもっていただけではなく、そこに勇気や強い意志があったとも言える。まさに「正義の人」だ。
  • 実際、彼は、2010年のガーディアンからの取材で、命の危険を感じながら「マドフ投資の会」の不正を告発していたことを振り返っている。
  • その彼が「エンロン以上」と形容して、GEの380億ドルにも及ぶ不正会計を大々的に報告した。
  • これに対して、GEは同日、すぐにハリー・マルコポロスの主張を否定した。
  • GEが不正会計を行ったか否か、真偽のほどはまだ誰にもわからない。
  • しかし、過去の実績からハリー・マルコポロスの不正報告は、株式市場に大きな動揺を与えることは確実だ。
  • 米国市民の間では、世界最大のファンドであった「マドフ投資の会」が潰れたイメージが脳裏に蘇ってきているのではないだろうか。
  • GEは事業上の構造的な問題があり転換点を迎えていたが、今回の不正報告が真実ならば、それどころではなく、より深刻な事態に陥る。
  • それは奇しくも、ウエスチングハウスの買収に失敗し、不正会計で大打撃を被った日本の雄・東芝の姿と重なる。


<参考記事>
バーナード・マドフ事件の詳細について
GEの歴史と現在の経営状況について

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