1. 外交・通商

米国が第4弾対中関税制裁の一部を12月まで延期

概要

  • 8/13、米通商代表部(USTR)は、中国製品に対する制裁関税「第4弾」の一部を12月に先送りすると発表した。
  • 具体的には、スマホ、ノートPC、衣料品、玩具、ビデオゲーム機などに対する追加関税の発動を先送りする。

解説

貿易摩擦の副作用を気にする米国

  • 米国は世界第3位の農業生産額を誇る農業大国で、貿易摩擦が起こる前の2016年時点では、中国に214億ドルもの農産物を輸出していた。
  • しかし、米国産大豆に対して25%の報復関税がかけられたことで、2018年の対中農産物輸出は91億ドルまで急減した。
  • さらに、今年8月には中国企業が米国農産物の購入停止に踏み切り、米国の農業経営者は明らかな損害を受けている。
  • 2020年秋に大統領選を控えるトランプ大統領は、共和党の票田となっている農業経営者が離反しないよう、対応を迫られている。
  • さらにトランプ大統領が恐れるのが、GDPの7割を占める個人消費の落ち込みだ。
  • 米国の個人消費は今のところ堅調に推移しているが、米中貿易摩擦の長期化で個人消費が落ち込めば、米国の経済成長は鈍化する。
  • 米国では、消費者がクリスマスプレゼントなどを購入する年末商戦の規模が1兆ドルもあり、その取引高が年間の個人消費に大きく影響する。
  • そこで、9/1から関税を引き上げるはずだったスマホ、ノートPC、衣料品、玩具、ビデオゲーム機などに対する追加関税の発動を12月まで先送りする。

中国も貿易摩擦による打撃は大きい

  • 中国も米中貿易摩擦で大きな打撃を受けている。
  • 中国の2019年4-6月期の実質経済成長率は対前年比+6.2%で、1992年以来最低となった。
  • さらに、外貨準備の減少も懸念され始めている。
  • 2014年に3兆8000億ドルあった中国の外貨準備高は、2019年7月末時点で3兆1000億ドルまで急減している。
  • 中国の外貨建ての借入2兆ドルと相殺すると残りは1兆1000億ドルとなり、これ以上の外貨準備高減少は危険だ。
  • これまで外貨準備高は、一帯一路の財源としても使われてきた。
  • ただでさえ、ネパールのダムやミャンマーの港湾などの建設中止が相次ぎ進捗が思わしくない一帯一路が、外貨準備の減少で一層停滞する可能性がある。
  • もちろん、外貨繰りそのものが難しくなれば一帯一路どころではなくなる。

政局的にも構造的にも、解決には時間がかかると見られる

  • かように双方にダメージを与えている貿易摩擦だが、早期決着は難しいと見られている。
  • 理由の一つは政局的なもので、2020年秋に大統領選を控えるトランプ大統領も、国内の支持基盤を盤石にしたい習近平国家主席も、相手国に引く姿勢は簡単には見せられないというものだ。
  • もう一つの理由はより構造的なもので、そもそも一連の貿易摩擦は、覇権国である米国と、次の覇権を狙う挑戦者である中国との争いであることだ。
  • 米国は、経済的に力をつけてきただけでなく、軍事転用可能な技術を蓄積してきた中国という脅威的な存在を弱体化させたい。
  • 一方中国は、なんとかして目の上のタンコブである米国の覇権を打ち破りたい。
  • 覇権国と挑戦国の構造的な争いゆえ、お互い貿易摩擦によるダメージがありつつも、簡単に譲歩することが難しい。


<参考記事>

米国が中国を25年ぶりに為替操作国に認定
追加関税制裁によりアップルが有機EL調達先を変更

外交・通商の最近記事

  1. ボルトン回顧録からの示唆

  2. 世界が変わるデジタル課税

  3. 日本から韓国へのビール輸出が20年4か月ぶりにゼロを記録するも、影響は限定的

  4. 日米デジタル貿易協定、世界で先進的なアルゴリズム開示禁止-WTOなどの参考に

  5. 日米貿易協定、自動車関税撤廃が焦点に、試されるルールベース

コメント

  • コメント (0)

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

PAGE TOP