概要
- 2019年3月に世界各国でボーイング737MAXの運航停止が始まってから5カ月が経過しようとしている。
- その間、機体を稼働させることができないエアラインは他の機種をリースで調達することで運航継続を図っており、旧型機737-800のリース料が上昇している。
解説
事故を契機にボーイングの主力
航空機737MAXが各国で運航停止に
- ボーイング737MAXは、ボーイング737の後継機で、座席数が138~230席のナローボディ機だ。エアバスのA320neoと争うこのセグメントは、稼働率が高いためエアラインが非常に重視し、市場規模も大きい。それゆえ、737MAXはボーイングの主力商品の一つだと言ってよい。
- ボーイングは737MAXの納入を2017年5月から開始し、サウスウェスト航空、ライオンエア、ノルウェーエアシャトル、ユナイテッド航空、アメリカン航空などに納入してきた。
- しかし、2018年10月にライオンエア、2019年3月にエチオピア航空が運航する737MAXが、離陸して数分後に墜落し、乗客乗員が死亡する事故が相次いで起きた。2019年3月から現在に至るまで、各国は737MAXの運航停止を命じることとなった。

運航停止で航空会社に損害が発生、
旧型機737-800の需給逼迫で潤うリース業界
- 737MAXの運航停止を受け、大口顧客のサウスウエスト航空は2019年10月まで、アメリカン航空やユナイテッド航空も11月まで737MAXの運航を停止する。
- 非稼働となった737MAXは金額ベースで300億ドルにも上る。OAGアビエーションの試算によれば、2019年11月に運航が再開された場合、737MAXを保有している航空会社は、世界全体で座席提供数が4,100万席減少し、40億ドルの損失を被る。
- エアラインは路線運航のため、リースなどを活用して他の航空機材を調達することを迫られており、こうした需要に押されて儲かっているのが航空機リース業界だ。各国が737MAXの運航停止を決めた2019年3月からの僅か5か月間で、737-800のリース料は40%程度上昇している。
危機に陥るボーイング
- 主力商品である737MAXの運航停止は、ボーイングの経営を揺るがすほどのインパクトを持っている。
- 2019年4月から、ボーイングは737MAXの生産台数を、月産52機から42機に縮小している。製造部門の習熟が進んでいない初期段階での減産は、人員・設備が大きくだぶついたまま時間が経過することを意味する。ボーイングは737MAXの生産コストが今後数年間で27億ドル増加すると見込んでいる。
- また、航空会社に支払う損失補償額は、今後数年間で最大56億ドルにも上ると見られている。
- さらに、事故の影響で受注も落ち込んでいる。2019年6月に開催されたパリ航空ショーでは、ボーイングの総受注はエアバスの363機に対し、282機と2割以上少ない結果となった。
- ただでさえ開発費や設備投資などの固定費が大きい航空機ビジネスは、投資回収までに10年単位で時間がかかる。運航停止による売上減少と費用増加は、737MAXの累計収支黒字化をさらに遠のかせるだけでなく、ボーイングの経営にも大きな打撃を与えるものと思われる。
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