概要
- 8月8日、ウーバーテクノロジーズはに2019年4-6月期決算を発表した。最終損益は52.4億ドルの赤字にのぼり、業績を公表している2017年以降で最大の赤字となった。
解説
主要因はIPO関連費用だが
本業も赤字のまま
- 赤字の52.4億ドルのうち、39億ドルは、IPOに伴い従業員などに与えた株式による報酬の評価額だった。
- しかし、これらの費用を除いても最終損失は13億ドルとなり、前年同期より赤字幅は拡大している。売上が31.2億ドルであることを踏まえれば、13億ドルの赤字も依然大きい。
自動運転時代まで赤字体質は変わらない
- ウーバーは売上の7割程度をライドシェアサービス、2割程度をウーバーイーツで稼いでいるが、主力のライドシェアサービスは儲かる見込みが立っていない。
- その原因は、ウーバーは顧客から受け取るライドシェアアサービスの対価の8割程度をドライバーに還元しているためだ。
- ライドシェアサービスでは、ドライバーの多さが顧客の利便性に直結する重要な要素だ。
- しかしドライバーは採用も定着も容易ではない。ウーバーの運転手は毎月に13%が離職していく。
- 既存ドライバーを繋ぎ止め、新たなドライバーを確保するために、ライドシェアサービスの対価の大半をドライバーに分配せざるを得ない。
- ライドシェアサービスの仕組みは単純なもので、差別化困難だ。そのため、事業者はドライバーへの対価支払いや広告料を競い合うように派手に使い、対消費者では価格競争に陥っている。
- ウーバーはこうした競争の末、中国では滴滴に、東南アジアではGrabと言った競合に市場を譲り撤退した。北米では現在もリフトと熾烈な競争を繰り広げている。
- ドライバーへの対価を支払わずに済む自動運転時代まで、ライドシェアサービスは赤字体質であり続けるだろう。
ウーバーは自動運転時代の競争優位を
築くため赤字に耐えて競争優位を磨く
- ウーバーはなぜ赤字を垂れ流しながらライドシェアサービスを継続するのか。
- 彼らは、破滅的競争の果てに、現在のライドシェアサービスで独占的な利益を得ようとしているわけではない。
- GAFAなどのデジタルプラットフォーマーへの独禁法適用が厳しくなりつつある環境下で、それは不利なビジネスモデルとなりつつある。
- ウーバーが狙っているのは、人件費がかからず利益を生むことが可能な自動運転配車サービスで市場のリーダーとなることだと思われる。
- その時競合に勝つために必要な要素は、顧客接点や、ブランド、UI/UXと言ったソフトな能力であり、それらは現在のライドシェアサービスを通じて培われ得る。
- ウーバーは当面の間、赤字に耐えながら競争優位を構築し、やがてくる自動運転時代に備えようとしている。
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