概要
- 8月6日、日本の長期金利が約3年ぶりに▲0.215%まで低下した。日銀は2016年に長期金利を▲0.1~0.1%の間に誘導する目標を設けていたが、2018年にはこの誘導目標を▲0.2%~0.2%の間に変更。
- 今日は、長期金利がその誘導目標の下限を更に割り込んだ。
解説
リスク回避機運が高まり
国債市場に投資資金が流入
- 8月6日も米中貿易摩擦による世界経済の先行き不安から、株式市場は軟調だった。
- それとは対照的に、リスクを嫌い、「質への逃避」を起こした投資家たちの投資資金が日本の国債市場に向かった。
- その結果、長期金利の指標である新初10年物国債の利回りが一時▲0.215%まで低下した。
マイナス金利の副作用と円高デフレ
の板挟みになっている日銀
- 2016年に導入されたマイナス金利は、日本の年金運用成績や金融機関の収益性に悪影響を及ぼした。そうした損害や社会的混乱から、 これ以上の金利低下は、市場からの反発を伴い、実施するには困難が予想される 。
- 一方で、金利低下を許容する力学として働くのが日銀が嫌う円高だ。今世界は「利下げ競争」の様相を呈している。各国が利下げを行った結果、極端に低金利だった日本と外国の内外金利差が縮小傾向にあり、それによって、円建資産が買われ、円高が進んでいる。そして、各国が追加利下げを行う余地がまだ残されている。
- 日銀は円高をデフレの要因とみなしているため、円高是正のために、更なる金利低下を行う可能性がある。
今後金利低下ではなく
「買いオペ」強化の可能性あり
- 上述のとおり、日銀は投資家とデフレの板挟みとなり金利水準を決めることが難しい状況にある。
- そこで、可能性として浮上しているのが、国債買い入れの強化だ 。日銀は過去において、金融緩和を行うために長期国債を買い、市場に資金を供給していた。
- しかし、こうした「買いオペ」には、金利上昇局面における「逆ザヤ」の発生や、国債の流動性低下により金融市場を歪める副作用があることから、日銀は2016年から国債買い入れを減らし続けている。
- 一方で、投資家の反発から金利低下が難しい場合には、緩和策として、買いオペの強化路線に逆戻りする可能性がある。
- 日銀はやがて短期/長期金利の引き下げか、買いオペ強化の難しい選択を迫られる日が来るだろう。
<参考記事>
世界で100年債の購入が増加
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