概要
- 日本の公取委の調査によって、米アップルが圧倒的な力関係を背景に、日本の大手企業から部品の製造に関する技術や知識を集めている疑いが明らかにされた。
- 日本政府は巨大IT企業の取引公正化に向けてルールを整備中で、知的財産の搾取も焦点の一つになりそうだ。
解説
世界中でGAFAに 独禁法や
反トラスト法違反の逆風が吹く
- 公取委の調査結果は、世界中で起こっているGAFAの市場独占に対する抑制の動きの一つだ。
- EUでは世界に先んじて、データを独占するデジタルプラットフォーマーに制裁を加えてきた。2017年以降、EUはグーグルに対し既に10億ユーロ以上の制裁金を3回に渡って課している。
- これまでGAFAに対して寛容であった米国政府も、Facebookの個人情報流出事件や、AmazonのAlexaによる音声収集事件などによって、消費者保護とGAFA規制の機運が高まった。
- さらに、Facebookによる暗号通貨「リブラ」も米国政府の警戒心を強く煽った 。歴史的に国家の専権事項であった通貨発行権を 、それも基軸通貨を持つ米国が野放しにはできなかった。
- 方針を転換した米国政府は、GAFA各社の反トラスト法違反の有無を調べ始めた。
- 市場支配が揺らがないと思われてきたGAFAに世界中で逆風が吹いている。
GAFAへの締め付けの着地点は未知数
- こうした独禁法/反トラスト法によるGAFA規制の効果は未知数だ。
- 米国の反トラスト法では、消費者が被害を受けたことを立証する必要があるが、GAFAのサービスは多くが無料である以上、反トラスト法違反とはならない可能性が十分にある。
- そこで、反トラスト法以外の手段として、GAFAを強制的に分割する案も浮上している。
- 2020年の大統領選に出馬表明している民主党上院議員のエリザベス・ウォーレンは、グーグルが携帯向けGPSアプリ「Waze」やスマートホーム機器を手がける「Nest」、デジタルマーケティング支援サービスの「DoubleClick」などを売却するよう要求している。
- しかし、GAFA締め付けを緩める力学も働いている。それが、現在米国と貿易戦争を繰り広げている中国の存在だ。
- 米国が自国のデジタルプラットフォーマーをいわば弱体化させようとしている中で、ライバルの中国では、BATに代表されるデジタルプラットフォーマーが大量のデータを収集し、技術やサービスを日々磨き続けている。
- 中国には13億人の人口という大きな情報源に加え、国内企業に対する個人情報保護要件が緩いという「地の利」があり、ビッグデータ蓄積に有利だ。
- GAFAを野放しにはできないが、中国に負けるわけにもいかない。ここに、米国政府の葛藤がある。
- 相反する力学が働き、独禁法によるGAFAへの影響は現時点では未知数だ。
<参考記事>
アップルと有機ELについて
この記事へのコメントはありません。